朝、鏡を見たら顔がワニだった

朝起きて、ふと鏡を見たら顔がワニになっていた

私は大抵のことでは驚かない方だ

「反応が薄い!」と友人や両親

おじいちゃんおばあちゃんにも怒られたことがあるほどだ

なので今回のことも驚かない


ことはなかった

私は目を真ん丸見開いて息をのんだ

鏡越しではワニだから分からないけどきっとそうした

しばらくにらめっこして、顔も触ってみたけど分からない

鏡越しではワニ頭 触ってみるといつもの人肌


そうこうしてると母親に怒られた

ボーっとしてないで早く朝ご飯を食べて学校に行きなさいと怒られた

深呼吸をして言われたようにする

両親や弟と目が合うが何も言われない


きっと寝起きで、頭が寝ているから幻でも見たのだ

出かける直前にもう一度鏡を見て確かめる

……やっぱり顔がワニだ。なぜだ


仕方なく学校へ行く

仲のいい友人や憧れの先輩

担任の先生に嫌いな先生

みんな私の顔を見ても何も言わない

いたって普通、いつも通りだ

友人に思い切って尋ねてみる

「私の顔、何か変じゃない?」

小さく唸ってまじまじと私の顔をくまなく見る

「強いて言うなら、ちょっとくまがあるかも」


それから何も起こらない

いつもの日常、いつもと変わらない学校生活

そんな時間がただ過ぎていく


放課後

廊下を歩いてたら 同じクラスの苦手な奴が向こうから歩いて来た

無視して通り過ぎようと俯いて足早に急ぐ

「なぁ!」

腕を掴まれて顔を上げる

「えっ!?」

「俺の顔、何か変じゃないか?」

野球部で汗を流す、精悍な顔がそこにはあった

「変じゃないよ。……私こそ変じゃない?」

しばらくじっと目を見つめて、徐に口を開いた

「変じゃないよ。いつも見てる、いつものお前の顔」

目線を逸らすと窓ガラスに映る自分の顔と目が合った

夕日色の私の顔

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