好きな人

はーちゃん

第1話

「実はね、好きな人がいるんだ」

そう打ち明けるためにどれだけ迷って考えただろうか。好きな人に向かって好きな人がいると告白するのは思っていたより疲れた。打ち明けたその返事が「誰?」であるから。バレてはいけないが、だけど自分ではないか、と思わせるところまで行かなくてはならない。そしてそう思わせた所で、しっかりと打ち明ける。だけどそれがゴールではない、むしろそこからスタートするのだ。

なんて言ってみたところで、そこまで行けるかどうかも分からない。行けないかもしれないし、運良く転がって行けるかもしれない。その先どうなるかは僕の言葉一語一句が関わってくるのかな。―――なんて、思い込みのしすぎか。

そもそも今日さっき打ち明けたのには訳がある。それは僕の好きな人が「彼氏出来るかも」と報告してきたことにある。もちろん、これが普通の女友達なら笑顔でおめでとうと言っただろう。だけど彼女は違う。彼女は僕にとってなくてはならない存在なのだ。

なくてはならない存在―――そう、それほど大切なのだ。なんて、そう気づかされたのも彼女がその彼氏候補の人とよく遊び、僕と遊ぶ機会が減ってきたからこそ実感出来たのだが。

だけどそんなことは置いておいて、実際問題、僕が打ち明けたことにより僕に対する興味が変わったとは思えない。当たり前だ。彼女は今、彼氏候補の男に夢中なのだから。

悔しいけど、納得してる自分がいるのも確か。

いつかはこうなると思ってはいたが、そのいつかがこんなに近くだったとは。僕も目先しか見えてないのかな。いや、それは関係ないか。頭がおかしくなってくる。

なんて、そんな長ったるい邪魔な思考もバレないように僕は

「誰だと思う?」と聞いてみる。

もちろん、その返事に期待はしていない。

「んー、わかんない」そう言ってちょっと笑う。その笑顔がものすごいずるい。僕が彼女から離れられない理由の一つでもある。

「ヒントはね―――」

会話はその後も弾んだとはいえないような調子で、それでも話は進んでいた。

複雑な気分だ。

なんて、そんな気分は忘れよう。とりあえず、今心配する必要はないだろう。この調子で少しずつ僕の「好きな人」の話題を振れば、1歩ずつ前に進んでいけるはずだ。

進んだ先が幸せならいいが。

そう思うのも僕な悪い癖かな。いや、現実的にみれるだけいい方か。

なんて、そんな風に気楽に僕は考えていた。この先の事を。彼女との関係を。

打ち明けた事により、さらに自分が苦しむとも知らずに―――

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