第63話 お姉さんのステルスキルで精神力を消費する

「どれにしようかな? あはっ!」


 アイさんが、ギルドのクエストボードをめる様に見渡す。


 相変わらず、貧相な紙に文字が走り書きされているな。


 かろうじて依頼内容が確認出来るけど。


「そうだねえ。報酬重視の依頼が手っ取り早いだろ?」

「メ、メジスト姉さん、背後からのむぎゅーホールド!? ステルスキルされちゃう!?」

『お主の場合、美女が正面からせまるだけで。られるじゃろうが!』


 ステルスキル――ステルスゲームで、静かに背後から敵を瞬殺する技だ。


 先程のモブ冒険者を追い払ってからと言うものの。


 メジスト姉さんからのボデェータッチの頻度ひんどが増えています!?


「……もっと若くて、おしとやかな体が良かったかい? ソー坊?」

「メジスト姉さんの肉体美に不満なんか、一切ないからね! 卑下しないで! ぷんぷん!」


 どうにもメジスト姉さんは。


 自分の所作振る舞いに自信が無いと言いますか。


 女性的な一面に自信が無いと言うのかな? 


 思わず、カナさんのぷんぷんエンジンをふかしてしまったぜ!


『おなごで戦闘力が高いからのう。周りから野蛮とか言われ続けた結果じゃろな』


「そ、そんなにぷんぷんしないでおくれよ!? ソー坊!?」

「こらあ! 人が真面目に依頼を選んでいる時に! メジねえ、イチャイチャしてるぞ!」


 珍しく、アイさんからの厳重注意。


 メジスト姉さんも、ばつの悪そうな表情だ。


「お仕置きだぞ! ソージ! あはっ💓」

「俺なの!? むぐぐぐ!? 谷間で窒息しちゃう!?」


 俺の顔を強引に、あはっ娘の胸元に押し付ける。


 柔らか苦しい!? 天国と地獄!?



「やあん💓 胸にあとが残っちゃった💓」

「結局、いつものセクハラお姉さんじゃないか!……ごちそう様でした」


 あれだけ胸に押し付ければ。


 キスマークと言いますか。


 ほんのりアイさんの胸周辺が赤くなっている。


 デスマスクを作製出来る勢いだったぜ。ふう。


「気を取り直して、クエストボードを見ますよ? えーと。ぬ? あの、高級紙で書かれている依頼は?」


 ひときわ、紙の高級感が目立つ依頼書。


 製本レベルの紙じゃないか?


 しかも、上品でお手本の様な文字で書かれている。


「あれかい? 貴族様からの依頼さ。誰も受けやしないよ」

「そうそう。お金で何でも解決出来る貴族の依頼だよ? それが、わざわざギルドに依頼するって事は――」

「お金で解決出来ない。厄介な依頼って事か」


 なるほど。手軽に依頼をこなすのが難しいのか。


 一応、依頼内容だけは確認してみるか。


「『未開みかいの森にて生息せいそくしている薬草を求む』だって。イラストつきだな」


 この植物は……アロエ? ヨーグルトとかに使われてる、あの?


 昔、祖母が育てていたっけ。火傷やけどの治療にも使ったな。


「『なお、現物を届けた者に金貨300枚の報酬』うわ。クリスティーナだったら、間違いなくこの依頼だよな」

未開みかいの森か。あそこは中々、楽しめる場所だぞ!」

「そうだねえ。あそこなら存分に力を発揮できそうだね。うふふふ!」


 おや? じゃあ、この依頼を受ける流れですかね?


「メジスト姉さん、野生の勘を取り戻すにはいい機会かも!」

「体もなまっていた所だからね。ソー坊? 貴族の依頼は二の次になるかもしれないけどさ」

「別に、構いませんよ? その森を探索するんですね。了解です」


 こうして、お姉さん達と未開みかいの森に出発するのであった。


 

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