第61.5話 サーヤちゃんとお泊り会です!!

「スラちゃん♪ ぽよん♪ ぽよん♪ お空みたいに青々♪」

「ぷるぷる♪」


 寝る前にスラちゃんとのたわむれ。


 特に決まった扱い方はありません。


 撫でたり、抱きしめたり。


 その日の気分です! えへへへ!


「上機嫌だね、カナちゃん。スライムさん、無事回復して安心しましたよ?」

「ぷるぷる♪」


 メガネをしているサーヤちゃん。


 知的な感じが高まりますね。


 サーヤちゃんにも撫でられて、スラちゃんも喜んでいます。


 さて。なぜ、サーヤちゃんが居るかと言うと。


 おとまり会です! 


 今日は、サーヤちゃんが非常にど疲れちゃんらしいのです。


『カナちゃんのオーラで、癒して欲しい』と頼まれました。


 ならば、今晩は一緒にお泊り会です! まったり過ごしましょう! となりました。


 お菓子と紅茶も用意済みです。メイドの特権です!


「サーヤちゃん? 日記でも書いてるの?」

「うん。今日のダンジョンでの行動記録、宝箱の中身、罠の情報、今後に役立ちそうな情報を書き留めているの」


 細かくダンジョン内の様子が書かれていますね。


 しかも、絵が上手です。


 クリスの姿、クモリーの姿等がそっくりに写し出されています。


 ちょっとした、絵本みたい。


「作家さんにでもなれそうですよ? 凄いですね! ふむふむ!」

「そうかな? お世辞でも嬉しいよ、カナちゃん」


 照れくさそうに笑うサーヤちゃん。


 はっ!? 思わず、むぎゅーをしてしまいました。


 わたしが、サーヤちゃんに癒されてます!?


「どうしたの? 私は、ソージ君じゃないぞ? 甘えんぼうさんだね。……なんて」

「い、いじわるです!? わ、分かってるもん!?……からかいましたね!?」


 めずらしく、サーヤちゃんが私に軽口を言ってきました。


 徐々にですが。


 仲良しの度合いが高まっている影響ですかね? 


 率直に、うれしいです!


「そう言えば、サーヤちゃん? 今日は、ご主人さまとは? どうだったの?」


 ふふふふ。反撃開始です。


 なぜだか、サーヤちゃんはご主人さまの話題を避けがちです。


「ふ、普段通りの関係だよ。……紅茶をいただきます」

「普段通りですか? 朝からむぎゅー、ほっぺちゅーとか?」(※43話参照)


 寝顔のサーヤちゃんは、可愛かったなあ。


 無防備な姿が、とても。


「ごほっ!? けほっ!? あ、あれは!? カナちゃんからしたら、普段通りだけども!? 私にとっては違うからね!? ソージ君にも、厳重注意しておかないと!」


 紅茶でむせるサーヤちゃん。


 そして、お菓子のクッキーをもぐもぐ。


 少し、荒々あらあらしく飲食しています。


「そうですか? あれ? 今日もサーヤちゃんとご主人さま、お風呂も一緒だったですか? これも、普段通り?」(※55話参照)

「ク、クリスティーナさんも一緒でしたから!? あれ!? 普段通りって何でしょう!?」


 あれこれと考え込むサーヤちゃん。


 ごめんね、いたずらな質問ばかりしちゃった。


「そもそも、今日の絶不調はソージ君が朝から!?……いえ、厳密に言えば、私が未熟な訳で」

「どうしたの? サーヤちゃん?」


 しんみりと落ち込み始めました。


 これは、いけませんね。


 スラちゃんに目配めくばせします。


「ぷるぷる?」

「スライムさん? むぎゅーしてくれるのかな?」

「はい! スラちゃんを抱きかかえると、嫌な事をまぎらわせてくれますよ?」


 私が落ち込んだ時には。


 スラちゃんは黙って話しを聞いてくれます。


 それと、アドバイスも。


「……その、私は、肝心な時に実力が発揮出来ないみたい。訓練とかでは、問題無いですけど。今日のダンジョンでも緊張しちゃって。お二人には、迷惑を」

「サーヤちゃん? 過小評価はダメですよ? あの、クモリーに炎の魔法剣? で立ち向かったじゃないですか? わたしだったら、震えて何も出来なかったよ?」


 ご主人さまの冒険譚ぼうけんたんを聞きましたからね。


 目を見張る活躍だと思います!


「それに、ご主人さまとクリスは仲間です。例え迷惑でも、支えるのは当然だよ? だからね、気にしないで良いの! きっと、ご主人さまも、そう思ってるからね!」

「……カナちゃん。私、カナちゃんと友達になれて、幸せですよ?」


 あわわわ!? サーヤちゃんが涙目に!? 泣かせるつもりは!?


「て、照れますね!?……ろん、わたしも幸せ者だよ」

「誰ですの? もっちー呼びは禁止ですわよ! もっちー!」


 び、びっくりしたです!? クリスですか!? いつから!?


「……思ってた通りですわ。サーヤの事ですからね。真面目さがあだになるといいますか。ケンカ売ってますの? 謙虚過ぎるのも、立派な精神的暴力! わたくしだって、今日も盛大に失敗しましたわ! 穴に落ちたり、階段から突き落としたり、味方にまで攻撃しそうになったり。ですが、ちゃんとダンジョンクリア出来ましたわ。おまけに初の戦利品も入手。反省すべき事と結果を一緒にしないでくださいませ! とにかく、今日は上出来って事ですわ! お疲れちゃん、サーヤ」

「……クリスティーナさん。うう、わ、わがりまじた。あばり、悩まないように、努力じます。ありがどう、なぐだめでぐれて、ふだりども」


 泣きながら、サーヤちゃんがお礼を言いました。


 いつも堂々としている裏には。


 自問自答して弱気になる。


 普通の女の子が隠れていたです。


「反省会はお風呂場でしたでしょ? こんな様子だと、また湯舟に引きずり込まれますわよ? ソージに」(※56話参照)

「なにそれ!? クリス!? 詳しく説明ちゃん!」

「せ、説明しなくていいよ!? ますます、カナちゃんに誤解されちゃうもん!?」


 さっきまで号泣していたサーヤちゃん。


 だけど、今度は恥じらいの様子を見せました。


 お泊り会は、まだまだこれからですね。

 

 

 

 


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