愛しのメイド姉妹とデート

第34話 メイドさん達とお菓子屋さんで精神力を消費する 

「ご、ご主人さま。人がたくさんで。……気持ち悪くなりそうです」

「普段も、こんな感じなの? カナさんは?」

「ええ。……村では教会の敷地内でのみ行動してましたから」


 ちょっと賑やかな街の通りにさしかかったら。


 カナさんの精神に不調が。


 俺も経験者だからなあ。


 近所のコンビニ、書店、駅構内。


 他人の目が気になる。


 社会的引きこもりの影響でさ。


「カナさん?……安心して? 時間を気にせず、ゆっくりリラックス。パニックになっても平気さ? 無理しない、あるがままですよ?」

「ふぁ、ふぁい。ご、ご主人さま、手をにぎってくれますか?」

「まあ!?……わたくしも、真っ黒な存在になりそうですわ! 旦那様、通行人をぶちのめしそうになります!」


 黒き衝動を理由に。


 通行人を襲おうと画策するリナさん。


 勘弁してもらいたい。


 カナたんのお手々に。


 ツボマッサージしちゃいましょうか。


「はううう!? ご主人さま? にぎにぎですか?」

「手の血行を良くしたり。精神安定のおまじないみたいなもんさ。ぷにぷにー」


 肉球がついてるの~?


 おっと、俺がリラックスしてしまったぜ。えへへへ!


「旦那様。ちょっと……殺意が」


 さ、殺意が、なんなの!? 


 重要事項は最後まで告げて!? 


「……へ、平常、通常、気分上々になりました。心もぽかぽかです!」


 またもや、クリスティーナの口真似をしている。


 メンタルの強さを見習っての事だろう。


「手をつないだままで買い物しようか。恋人つなぎ!」

「……ふふふふ。やります? やっちゃいます? 旦那様を?」


 ダ、ダイイングメッセージを準備しないといけないの!? 


 リナって書く練習しちゃうよ!?


「うー。両手にメイドさん、目立つわ! ひそひそ話もしてるじゃん!」

「……赤の他人達が、わたくし達の絆に圧倒されてるだけですわ。……よそ見は、いけません!」


 道行く人々が珍しい光景に。


 感想を述べてるだけ……と思いたい。


 優勝パレードかよ!? 有名遊園地のキャストになった覚えはない。


 リナさん、僕の手をおもちゃみたいに扱わないで!? 


 お胸もね、腕に押し付けないで!? 


 お色気作戦、地味に効果あるからさ!?


「ご主人さまの隣の安全は、バッチリです!……手と手が組み合ってます。はわわわ!? 顔が熱くなってきちゃいました!? な、なんででしょう!?」


 カナさんもこの通り、元気です! 


 きゃわわメイドさん!? て、手汗が出ちゃいそう!? 


「何を買いたいかな? まずは、カナさんの欲しい物は? 遠慮は、しちゃダメだからね?」

「えーとです……こ、この匂いは!? ふおおお!」

「……バターでしょうか?……お、お菓子、つまみたいですわね!」


 甘い洋菓子の香りが? 


 付近にお菓子屋さんがあるのか。


 リクエストに応えて、行きましょう! ふおおお!






「『貴族様、御用達のお菓子もあります。店内でも飲食可能。気軽に来店してください。ユニコーン菓子店』だって」


 バターの芳醇な香りに誘われて。


 洋菓子店の店先に。簡単な案内板を読み進めた。


「お、おしゃれなお店です! よろろ、よろしくちゃんしてくれますか!?」

「ハーフエルフでも購入可能でしょうか? 異物混入された品物を高価格で買わされたり?……その時は、ふふふふ」


 リナさん、偽計業務妨害だけは。威力業務妨害もですけど。人種問題か。


「まあまあ。躊躇ちゅうちょせずに入店してみよう」





「いらっしゃいませー! ユニコーン菓子店へ! ご自由に店内をご覧になってくださーい!」


 店内に入ると。女性従業員の元気なあいさつで接客してくれた。


 ショーケースには、ケーキ、チョコレート、プリンと言った洋菓子が綺麗に並べられている。


 商品を選ぶだけでも。血糖値が上がりそうだ。


「ひゃ、ひゃい、カ、カナです!? お菓子、大好きメイドです!?」

「カナさん。自己紹介、お疲れちゃんですね。なでなで」

「ほう? ビスケットにしても、様々な種類を用意していますわ。まともなお店をよそおっていますの?」


 どこの調査官なの!? リナさん、敵意をむき出さないで!?


 お菓子な空間が。おかしな闇にのまれちゃうの!? ブラックホール!?


「ふおおお! ユ、ユニコーンサブるえー!?」

「サブレーか。ビスケットとは異なる調理方法だったかな? 材料の割合?『ひび割れてしまった商品を無料で試食出来ます』だって」

「もぐもぐ。毒見をしないとですね。旦那様の為に。……芳醇なバターに甘さ。あら、あら、あらら!?」


 ちょ、カナさんの分、残しておいてよ、お姉ちゃん!?


 全部試食されないように。確保しておこう。


「はい、カナさん。ユニコーンのつのと胴体。スライム君にも」

「む、無料ですか!? ゆ、夢みたいなサービスです!? お店、潰れちゃいます!?……お、おいしいです! バターと砂糖にタマゴさんですか? ひ、ひあわせ」

「ぷるぷる♪」


 スライム君にも好評ですな。しかし、これからですよ? 


 俺は異世界人。


 コンビニスイーツ。デパ地下のお菓子も食した事もある。


 もっと、威力のあるお菓子が出てきちゃいますよ!


「お? リナさんにぴったり。チョコレート。……こっちも、かけらを食べられよ?」

「あ、暗黒物質ですか? 固形状ですの?……舌の上で溶けてます!? 苦くて、後から甘味!?……摩訶不思議!?」


 チョコレートとリナさんか。


 似ていると言えば、似ているな。


 相性バツグンだね!


「かすたーどぷりん? スラちゃんみたいですね!」

「牛乳、タマゴ、砂糖を混ぜ合わせて。焼いて固めたものだったかな?」


 流石に、試食する事は――


「新人育成のご協力をお願いします! こちらのカスタードプリンは新人さんが作りました。アンケート用紙に記入して下さる方限定で。おひとり様一つに限り、無料となっております!」


 店員さんによるアナウンス。お客さんがプリンに殺到する。


「ふおおお! やりますです! 食べるです! 感想書くです!」

「わたくしも、協力しますわ! サービス向上運動! 旦那様は?」


 こ、この店、やり手の経営者だよ!? お客様の心を掴みすぎだろ!? 


 俺の居た世界でも。こんなに良心的なお店は、知らないぞ!?



 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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