第31話 魔法騎士団副団長のお見舞いで精神力を消費する

「ほう、貴殿がアカギ騎士か。『アカギおろしの一刀』の異名は、イノセント様もご存知だ。小さな山をも崩壊させたらしいな」


 ゆ、有名人なの!? アカギのおっさん!? 武勇伝じゃん!?


「……大変名誉な事だが、過大評価だぜ? 俺がやったのは小規模の丘だ。いい迷惑だぜ、通り名ってもんは」


 丘を破壊した? マジか。期待を裏切らない風貌だな。


「嘘だとしても、貴殿の技量なら全く不可能な事でもあるまい」

「……おだてても能力はあがんねーぜ。イノセント様の懐刀ふところがたなのエンファンス副団長さん。魔法騎士団は活動自粛だろ? あんたも例外じゃないはずだが」


 自分より弱い者の進言など意に介さない女だよ! 


 唯一、団長のイノセントの命令は絶対遵守するぐらいか。たちが悪い。


 実は、この実力至上主義者のエンファンスとも出会っている。


 この世界に来たばかりの時。


 イノセントと遭遇して。事情を説明している時だ。


 有無を言わさず、本気で攻撃して来やがった。


 イノセントが攻撃を防いで無かったら、お陀仏だぶつだったぜ。


「私は、むざむざ通り魔に半殺しにされるような失態は、しないと理解している。……休暇中みたいなものだ。……それなりに責任はとれると自負しているが? 不満か?」


 有給休暇を消化しょうかする理由なの!?


 個人的な活動は自粛してない事をにおわせてるのね。


 へ理屈りくつだ!


「お、お見舞いでしょうか!? 被害に遭われた魔法騎士さんも、安堵なされるでしょうね?」


 プレイヤさんが必死に。


 場の空気が悪くなって来るのを防いでいる。


「『瞬間回復のプレイヤ』か? 傷口を瞬く間にふさぐと言われてる? あの?……一命をとりとめた要因か。思い違いをしているようだが、私は事情聴取に寄ったまでだ。それ以外に重要な事は、あるのか? 魔法騎士団の恥さらしにかける言葉など。死んだ方が名誉だなと告げるぐらいか?」


 はい、力ある者しか認めません発言ですね。


 だから、こいつとは関わりたく無い。


 ベッドのシーツにくるまって横たわってた方が利口だ。


 ハーフエルフのリナさん、カナさん、モンスターのスライム君も、み、密着状態で、隠れています。


 きゅ、窮屈きゅうくつだが。カモフラージュとしては成功だな。


 魔力さえ出さなければ。エンファンスは気にも止めないだろう。


 ゴミの様な人間が、ベッドにいるぐらいの認識さ。


 いや、下手をすると存在すら認めないだろうな。


 好都合でーす! 塩まいて、追い払いてえー!


「……個人の考えに口出さねーが、事情聴取だあ? 意識も回復してねーのに? 拙速すぎねーか? 死にかけた奴に対する仕打ちとしては、あんまりだぜ、エンファンス!」

「見たところ、眠っているだけにしか思えんのだが? せめてもの利用価値を私自ら、与えてやっているのだぞ? 光栄であろう? それすら出来ないのなら、死んだ方がマシだな、こいつは。……そちらの方が、皆の士気も上がるのではないのかな? ふむ、悪くない。どちらにしろ、容体が悪化しても得るものはあるさ」


 ふんふーん。今日は帰宅したら。


 みんなとイチャイチャしたいなー。


 エトセトラにも奉仕してやんないと。


 クリスティーナの修行の続きもしてやるかー。


 メジスト姉さんには、大人の授業してもらおう。


 アイさんには、いたずらを。


 サーヤには本でも貸してもらおう! 


 リナさん、カナさん、スライム君と、またおやつ食べたーい! あははは!


『お主、やらかしそうだぞ?……イノセントと連絡した方が確実じゃろうに』

「ちくしょうが、エンファンス!! それ以上、近寄る――」


 アカギのおっさんがエンファンスの暴挙に立ち向かう!?


 ボス戦闘開始かよ!?


「クソやろーです! 病人を、い、いじめる、無能者! てめえが死ねですうー! ゆえつ、ちょうえつ、えんふぁんすー! ご主人さまの慈悲をむだにすんじゃーねえーですよお!」


 クリスティーナ! 情操教育に悪影響を与えやがってええ! 


 カナさんが啖呵たんかをきるなんて!? 


 完全に予想外の行動だ!?


『ええええ!? 丸っこいメイドがやらかしおったぞお!?』


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