誰にも言わない/卯花 かなり
魔法のiらんど文庫/カクヨム運営公式
プロローグ
世間から見れば交わることのない、私とオッサンには、誰にも言わない秘密がある。
それは決まって、金曜の夜から始まる。
そしてそれは決まって、月曜の朝に終わる。
週末の度に繰り返されるそれを、不思議に思ったことはない。
閉めきったままのカーテンと、部屋に漂う煙草(たばこ)の匂い。
柔らかなシーツが、幾重にも波を作る。
まるで日常から取り残されたようなその部屋で、今が
私は一人じゃない。
「ヒノ」
歳の離れた男が、私を呼んだ。
だけどこの男のことを、私はよく知らない。
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