10章 にげよう

 ひめさまがおうさまにけっこんをいわれてから、にしゅうかんがたちました。


「いよいよ、あしたはおうじさまと……」


 ひめさまはかなしそうに、そうつぶやきました。




 ところが、そのひのよる。


 ひめさまのいるへやに、きつねがはいってきました。


「ひめさま。おきて」


「ん……。きし、さま……? きゃっ!」


 きつねはひめさまをかつぐと、みみもとでささやきました。


「にげよう。にげて、いっしょにすごそう」


 ひめさまは、ためらいました。


 おうさまのことばときつねの、どちらをとるのかをまよっていました。


 けれど、ひめさまにとっては、きつねとすごしてきたじかんがかけがえのない、たいせつなものでした。


「……はい!」


 ひめさまはかくごをきめ、きつねといっしょににげることにしました。

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