拾壱。 どっきり!?魔法少女、パワーアップです!

拾壱。 どっきり!?魔法少女、パワーアップです!


前回のキミきせは――


 小学校にワームが現れちゃった!

 でも、私は戦えなくて、絶体絶命のピンチ!

 そんな時に現れたのは新たな魔法少女で――


 二人で仲良く魔法少女、はじめます!



2005年 11月 10日 午後10時


 イスカが姿を見せなくなってから、ユウは自分が何もできないことを思い知らされた。

 お金を得ようにも芸能事務所と連絡も取れない。

 ワームを探知することもできない。

 故にユウは自分の足でワームを探すことにした。

 魔法少女の気配に誘われてか、ワームはユウの前によく現れた。

 ユウは結界にワームを閉じ込め、いたぶるようにワームを倒し続けていた。

 思い通りにならない現実に対して憂さ晴らしをするように。

「いらない、いらない、いらない、いらない。私をいらない世界なんていらない」

 ユウは夜道に一人で譫言のように呟き続ける。

「いらないなら壊してしまえばいいんだ。世界なんてなくなっちゃえばいいんだ――」


2005年 11月11日 午前9時


 ユウは路上で夜を過ごした。

 冬が訪れ始めている路上で小さな子どもが夜を越すというのは正気の沙汰ではない。

 そして、今のユウは正気であるとは言い難い状況だった。

「ワームを倒すの。それだけが私の生きている意味だから。ここはどうもワームが少ない。だから――別の場所へ――」

 ユウがボロボロの体を前へと押しやろうとした時、の気配をユウは察知した。

 体をこわばらせながら後ろを振り向く。

は他のワームに比べれば小さな体をしていた。

成人男性の身長の2倍あるかないかほどであった。

他のワームと違うのは赤黒い禍々しい色をしているということと、醜い姿であるにもかかわらず、思わず見とれてしまうような神々しさがあることだった。

「!?」

 ユウは無意味に一歩後ろに飛び退く。

 そして、コンパクトを構える。

「変身」

 ユウは静かに魔法少女へと変身を遂げる。

『やっぱり、私のことが見えるのですね』

「え?」

 ユウは思わず視線を左右に向ける。

 しかし、声を発するような生き物は一切存在しない。

「まさか――」

 ユウは考えられる可能性に目を向ける。

 は静かに佇んでいた。

『あなたは恐らく長くはないのでしょう。私の声が聞こえるのでしょう?私たちの姿が見える時点で片足を突っ込んでいるようなものなのですが』

「何を言っているの?醜い下等生物が!」

 ユウは右手を振り、バトンを出現させる。

『そうですね。私たちは醜い。でも、元はあなたがたと同位体なのですよ』

「なにを――言っている!」

 ユウはバトンを振る。

 すると、天井からユウの生み出す空間が世界を塗りつぶし始める。

揺らめく影の少女歌劇はしれこうそくのていこくかげきだん

 それでもワームは落ち着きを払っているようにユウには思えた。

『私たちは別の世界のあなたがた。願いを叶える存在を心の底から憎むもの』

「うるさい!黙れ!」

 ユウはバトンを振り、魔砲を放つ。はユウの攻撃をそのまま身に受ける。の体は抉れ、赤黒い体液を大量に溢す。

『あなたは世界を憎んでいる。そして、私たちもまたそうなんですよ。なら、戦う理由など――』

「お前に、何が分かる!お前らに、私の何が!」

 ユウは話すに向けて何度も魔砲を放った。

『どうして苦しむんですか?それだったら、楽になった方がいいに決まっています』

 ころり、とワームの肉片がユウの足元に転がる。

 ユウは最後に残った肉片にバトンの先を向ける。

 バトンを振ろうとして――その手はピタリと止まってしまった。

『そうです。憎しみに全てを委ねればいいんです』

 ユウは無力な肉片を胸に抱いた。

 肉片はこぽりと音を立てる。

 不気味な音とともに、肉片には円状の口が開く。

 のこぎりのような口はそのままユウの胸にかぶりついた。

「うぅあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁ!!」

 ユウは叫び声をあげる。

 断末魔の叫びであるにもかかわらず、体中を苦痛が這いずり回っているにもかかわらず、ユウの表情は愉悦に満ちていた。

 世界の破滅と同じように自分自身の破滅をも望んでいたというように――

 ユウの黒いショートカットの髪は白い老人のような髪に変色していく。

 黒い瞳は、琥珀色の、不気味な色へと変貌を遂げた。

 白い魔法少女衣装は黒く染まっていく。

「ああ、これこそ本当の我なのだろうな」

 ユウの声は叫びにより枯れ、少年のような声に変わっていた。

『あなたは魔女になりました。世界を憎み、魔法少女を殺す存在へと』

 うふふ。

 ユウだった者の妖しげな笑みがこぼれる。

『あなたの名前は何がいいでしょうか。そういえば、私はあなたの名前を知りませんでした』

 にたり、と白い魔女は嗤う。

「ザウエル。魔弾の射手にふさわしい名だとは思わないか」

 かつての名に似た銃の名を魔女は冠した。

『ところで申し訳ないですけど、私の体はあなたにバラバラにされました。なので、長い間、私は休まないといけません。私の復活に合わせて準備をお願いします。その他は、ゆっくりとあなたの好きなことをしていてください』

「言われなくても分かっている」

 ザウエルは復讐を果たすために一歩、足を進めた。


次回予告!?


 叶えたい願いは誰にでもある。

 だから必死に生きていくんだ。

 願いを叶えるために。

 みんなの願い。それを叶えるために。

 私はいつまでも頑張ります!


 次回、最終回!『フィナーレ!世界は私が救います!』


 そして罪はより深く――

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