キミといた季節

竹内緋色

壱。 びっくり!妖精さんたちの会議ですっ!

 壱。 びっくり!妖精さんたちの会議ですっ!


 2005年 8月 24日


 この日、我らの母、サギノミヤがにこの世界の人間と通い合った。

 そして、二度目の『はじまりの魔法少女』が誕生した。



 同年 9月3日


 はじまりの魔法少女はワームと通い合い、我らが母を裏切る。

 そして、特異存在『魔女』と化した。

『はじまりの魔女』は自らをピースメイカーと名乗る。

 はじまりの魔女はサギノミヤを破壊しようと目論むも失敗。

 その際、サギノミヤは宇宙へと投げ出され、それと同時に、緊急措置として我ら『妖精』は産み落とされた。


 我らの目的はただ一つ。

 来るべき災厄ロストに備え、戦力を蓄えること。

 そのために我らはこの世界に対する情報を集め続けた。

 それは今なお実行中である。


 同年 9月19日


 16日間という節目において、我ら『妖精』は情報の同期を始める。



 情報の同期による整理を始める。

 まず、ロストとはなにか。

 結論は出ず。ただ、我らの母が襲来を予言した存在であり、世界を滅ぼしうる存在であるという以上の結論は得られない。

 故に、実在も乏しい。

 しかし、『それ』は我らの活動原理でもあり、最重要のものとする。この世界のみの情報ではこれ以上成果を得られないと考え得るものの、継続してその実態を調査せよ。

 活動原理とはなにか。

 行動原理である。

 行動原理とはなにか。

 生きる意味である。

 生きる意味とはなにか。

 この世界を支配している知的生命体『ニンゲン』の言う概念である。その実態は無である。概念体であるというほど確立された概念はない。

 故に、未だ我らでは理解しえぬ概念であり、我らで理解しえぬということはそれは無であるということである。

 では、我らの活動原理も無であるのか。

 しかり。

 されども、『ニンゲン』はその無を抱き、活動している。それは個性なるものに依存しているという。無を失うということは死を意味する。

 個性とはなにか。

 不明である。

 ニンゲン固有の概念である可能性が高い。高次元存在である我らであってもそれを認識することはできない。

 あるいは量子振動による個体差か。その個体差による概念認識の違いか。


 魔法少女とはなにか

 ワームに対抗できる唯一の存在。同名の呼称がこの世界に存在するが、我らの認識する概念とは微妙に異なる。それが何故なのかは不明。500年前から続いた概念ではないようである。ここ数年で構成された概念である。フィクションにおいて『魔法』なるものを使い敵と戦う存在である。その点では我らの知る概念と同じであるものの、『魔法』という概念がフィクション独特の雑多な複合概念となっており、完全なる定義づけも、また、差異をも考察することは不可能。少なくとも我らの知る6次元励振反応による副次的5次元同化及び、超高次元連鎖反応とは別のものである。

 ワームとはなにか

 我らを恨み、高次元認識能力者の認識能力を捕食するものたちの総称である。

 恨みとは何か

 低次元知的生命体特有の防衛本能に基づく感情のようである。高次元存在である我々には理解しえない。

 高次元能力者の実在について

 この世界にもまた高次元認識能力者が存在しうるようである。それらは我らやワームの存在を認識できる。また、それらは一部の血族に引き継がれている特性ではないかと考察をし、調査を行ったところ、一部血族間にはさほどの血族的つながりもなく、模倣子による類似点も少ない。故に、従来の量子振動共鳴説をとる。

 我らの概念書き換えを行う、高次元接続事象における可能者――高次元能力者は高次元認識能力者であることが前提であり、その中からさらに高次元共鳴を起こす高次元存在の振幅機能を表す値の共通認識が必要であるがそのためのサンプルに乏しく、各自で調査をし定義せよ。


 今後の活動について

 現在、ある特定の地域において急激にワームの出現が少なくなっている。

 その場所の調査をするとともにその場所に特別に108いる我ら端末の3体を配置する。

 また、激戦区においてはすぐにでも魔法少女を作り出すことが必要である。我ら概念体には死という概念が付着していない。しかし、ワームは高次元認識能力を捕食している。故に、我らの目的を妨げるものである。高次元存在である我らと似て非なるワームを倒すことができるのは魔法少女のみである。魔法少女を作り出し、ワームを殲滅せよ。そして、来るべき災厄に備えよ。


 終わりに

 以降の同期は禁止する。これは我らが母、サギノミヤの意志である。

 それは我らが母が我らの進化を望む故である。

 以後、現世界の最高知的生命体であるニンゲンの意思疎通手段――音声、筆記によるものだけで更新せよ。


 これらは妖精の総意である。

 そこに相違など生じえない――



 同年 9月 20日


 我ら『妖精』3体は一同に会した。

 特殊地域――新本という国におけるそそぎ灘、そよぎ丘という地域――を担当することになった我らだった。我らには呼称がない。名がない。そして、姿もまた、安定しない。

「我らが母は何ゆえに以降の同期を禁じたのか考察」

 妖精1号(仮称)は音声にて伝える。

 だが、厳密には音声ではない。音声と似た高次元量子による振動――高次元存在にしか聞こえない音声にて言っている。

「それぞれの個体による独自算出により、並列化を防ぐのが目的ではないかと推測」

 妖精2号(仮称)は言う。

「我ら独自に探究し定期的に情報共有をすることを提案する」

 我は――妖精3号(仮称)はそう言った。

 我らの前にはテレビと呼ばれるものがある。

 商店街という地理的経済協力体の中にある電化製品専門店――電気や半導体により振動を生み出すだけの物理的装置を売る供給役――に設置されているテレビを見ていた。

 そこには光学による物理記憶を電子による物理装置で表したもの――ニンゲンの言うアニメーションが映し出されていた。

「魔法少女。これがこの世界の魔法少女」

 我らの持つ概念とは別にこの世界には独特の概念があった。

「妖精――」

 魔法少女なるものの傍らには妖精と呼ばれる――我らに類似した存在があった。

「並行世界個別振動による軋みの誤差であるのか――」

 しかし、我らはこの世界で生み出された存在。なれば、並行世界に関りを求めるのは間違っている。

 疑問は残るものの、現状では無視するに値するほどの誤差であった。

 私は妖精とアニメーション内で呼ばれている存在の概念をトレースした。

「我、魔法少女を生み出す。故に、現世界に即した魔法少女を演出する」


 そしてそれが我の――いいや、僕の犯した最初の過ちだった。


 次回予告!?

 何気ない日常を送っていた少女、悠の前に突然へちまみたいな妖精が現れちゃった!?

 その人はなんとイケメンに変身しちゃって!?

 そして、私に魔法少女になって欲しいって言ってきて。

 そんなの、断れるわけないじゃない!


 次回、『ワクワク!?私が魔法少女に!?』


 そして罪はより深く――



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