異世界でアイドルをすることになりました
to-ru。
第1話 死んでしまいました
グオォォォォォォォォォン!!!
純白の鱗を持つドラゴンが苦しそうに身をよじる。
縄張りを広げて旅人や村を襲い、調子に乗っていたドラゴンを討伐依頼を受けた若者のパーティが取り囲んでいた。
「これでもくらえ!」
皮鎧に身を包んだシーフが背後に回り、防御の薄い翼や背びれの付け根にナイフを飛ばす。致命的なダメージは無いものの無視のできない痛みにドラゴンは意識が散らされる。
「砕けろオラァ!」
大きな戦槌を振り回すドワーフがドラゴンの動きを止めるために脚をぶん殴る。足元をちょろちょろ動き回るドワーフを踏みつぶそうとするも、そのたびに転がって回避し、再び脚を殴りつける。
「こっちだこっちだ!」
蒼く輝く鎧を着こみ、大きな剣と盾を持つ戦士がドラゴンの首に剣を突き刺し鱗をはがす。苦し紛れに振り回す首での一撃を盾で受け止め、吹き飛ばされてもすぐに間合いを詰めてブレスの死角に入る。
「マジックアロー!」
黒いローブを身にまとい大きなおさげを揺らす魔法使いが手にしたスタッフから魔法の矢を放つ。当たれば一瞬で消し飛ばされるドラゴンのブレスの射程範囲から外れるように慎重に動き、一方的に魔法を撃ち続ける。
「ブレスが来ます!離れて下さい!」
真っ白な慈愛神シルヴェリアの僧服を着た神官がさらに後ろから指示を飛ばす。視界を広く戦況を見渡し、パーティーのダメージを見極めて回復させる。仮に誰かが攻撃を受け損ねて死んだとしても原形さえ留めていれば復活の魔法で生き返らせることができた。
すでに戦いは長時間に渡っているが、最初にシーフのナイフと魔法使いの魔法で翼を潰され、前に進むことも逃げることもできなくなったドラゴンと、最初から長期戦を想定し、ポーションを飲みながら適切な距離で戦い続けるパーティとの間には気力と体力に大きな差が出ていた。
奥から一方的に攻撃してくる黒い女と、さらに奥にいる白い女を憎々しげに睨みつけながらドラゴンは足元の男たちを攻撃する。しかし首も尻尾も踏みつけもすでに力はなく、ドワーフの戦槌を腹に受け苦し気に頭を下げた。
「今です!雷を!」
「わかった!サンダーボルト!」
神官の指示に素早く呼応し、魔法使いがスタッフから雷を飛ばす。一直線に頭に当たった雷は背骨を通って尻尾から突き抜け、ドラゴンの身体を硬直させる。
「トドメをお願いします!」
「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
盾を捨てた戦士は両手で握りしめた大剣を伸びきったドラゴンの首に振り下ろす。宙を舞った頭が地面に落ち、一瞬とも永遠とも思える静寂の中を大きな音を立てて胴体が地面に崩れ落ちる。
誰からともなく歓声が上がり、安堵の空気が流れる。それは確実に勝てるように立ちまわってたとは言え、ドラゴンが決して楽な相手では無かったことを物語っていた。
前衛の3人と合流するために駆け寄っていた神官は、転がっているドラゴンの頭が視界に入った。半開きになっている口の中の光が、前を走っている魔法使いを捉えていることに気づいた神官は、一気にスピードを上げて魔法使いを突き飛ばした。
勝ち誇ったような咆哮と、それを叩き割る音を耳にしながらサーシャの意識は光の中へと消えていった……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます