第3話 うん、これからどうしよう
それからほどなくして俺は可愛い彼女(龍)とともに巣穴と帰った
(まあ、無理やりなんだが)
逃げ出すことも考えたがすぐにその考えを捨てた
今逃げ出してもすぐにつかまってしまう
「さて貴様の名前を聞いていなかったな、名は何と言うんだ?」
(別に嘘をついてもしょうがないよなぁ)
「連です。高坂 連っていいます。貴方の名前を聞いても?」
「ん? なぜそんなに他人行儀なのだ?我々は付き合っているのだぞ、もっと親しくしても我は別に怒りはせん、ちなみに我の名はファフニールという。」
(あー終わったわ、こいつ伝説級に有名なやつじゃん、俺なんでこんなところにいるんだろう)
俺はあははと笑い
「そ、そうだな、俺たち付き合ってるんだよな! よろしくな、ふぁ、ファフニール」
少し噛んでしまったが問題ない演技力でカバーだ
「う、うむ、連、それでは飯にするか」
そういうとファフニールは奥から何かを持ってくる
それは動物の死体、なんて生易しいものではなく、顔はライオン、胴体は羊、尻尾は蛇という、いかにも俺の知っている生き物と一致する怪物の死体がそこにあった
(え、これキマイラだよな......え? これ食べるの? 無理でしょ)
俺は笑顔のまま表情を変えることなく聞く
「あの~、僕ですね、キマイラアレルギーなんですよ、触れたとたん、体から体液があふれ出して最悪死ぬんですよねぇ」
(まあ嘘だけど、これを食べるなんて無理だろ)
「アレルギーとは何か知らんが、呪いの一種なのだろう、ふむ分かった、ならこれはどうだ」
ファフニールは次に首から上と下は鶏、胴と翼は龍、尾は蛇、さっきよりはましな生き物を持ってきてくれた
(これならなんとか、ん?)
俺は死体から見える肉の色を見逃しはしない
(紫色......うん、これもだめだな)
流石にあの色の肉を食べられるほど俺の胃袋は頑丈ではない
「あはは、悪いけど、お腹すいてないんだよなぁ」
食べたくないがために嘘をつく
当然だ、これを食べる勇気が俺にはない
食べたらきっと何かが起きてしまうそう感じさせるほどの何かがあの肉からは発せられていた
「そうか......」
ファフニールは明らかに残念そうに首を落とす
(やめて! そんな姿僕に見せないで!)
俺の中に残っていないと思っていた良心が痛み出す
仕方ないか......
(これを食べるのか? やめとけ......最悪死ぬぞ、でも食べないとあいつが悲しむしな)
心の中で葛藤する
ああもうこうなったらやけだ
「ああ! お腹すいてきたな~わぁこんなところにおいしそうなお肉が、でもお高いんでしょう?」
ファフニールは首をかしげこちらを見ている
それもそうか、よし食べるぞ
(がんばれ俺、何とかなる、今までもそうだっただろう)
覚悟を決め俺は紫色の毒々しい肉にかぶりついた
「うん、うまいなこれ」
笑顔でそういう、実際硬くて食えたもんじゃなかった
だが悲しませるわけにはいかないので演技でも笑っておく
「そ、そうか! それならよかった、うむ、我もいただくとしよう」
機嫌が戻ったファフニールは俺と隣に来て同じ肉を食べ始めた
「フフ、我がまさか人間と一緒に食事をするなど考えられなかったな」
そうつぶやいた龍の瞳にはうれしさがみえた
こいつも結構苦労しているのかもしれない
ずっと一人でここにいたらそりゃ寂しくもなるだろう
(なんというか、悪い奴ではなさそうなんだよなぁ)
まだ数度しか話していないのに黒龍の性格の良さに泣けてくる
「んん、そろそろ寝るか、連」
「ああそうだな」
ある程度世間を話を済ませたところでお眠になった黒龍がそう言ったのでファフニールの寝床についていった
そこには予想通り黄金の山があった
「すごいな、これお前が集めたのか?」
「うむ、連とも言えど一つでも盗んだら我は容赦なく殺すからな」
(盗まねぇよ、てか盗めねぇよ)
「俺がそんなことするように見えるのかい?なあファフ」
俺はそう言い奴の口に俺の口を当てた
その感触はなんとまあ想像に任せる
「な、な、な何をするんだ、それにふぁ、ファフだと?」
ファフニールは顔を赤くし戸惑っていた
「いっただろう俺はお前の事が好きなんだ、お前を傷つけるようなことするわけがないだろう、ファフって呼ぶのだめだったか?」
俺は悲しそうに下を向く
ファフニールは羽をばたつかせ明らかに焦っていた
「う、うむそうだったな、別にうれしくはないが、お前の気持ち確かに伝わった。勝手にするがいい。さ、さあ寝るぞ」
ファフニールはそういい寝始める
(ちょろい)
しばらく時間がたったころ
「なあ、ファフ起きてるか?」
返事はなかった
俺は立ち上がり洞窟の外に出た
(ちょろい所詮はでかいとかげだな)
俺はついつい笑みがこぼれてしまう
「早く逃げないとな」
そう俺はあの龍からどうやって逃げ出すか考えていた
そのためにはあいつの警戒心をなるべく解いておく必要があった
「まあ、俺にかかればこんなもんだ」
そういい走り出す、なるべく遠くに行くために
時間がない......あの場所に戻ったらまた生肉生活が待っており俺にとっては苦痛だ
人、そうこの世界でまだ人に会っていない俺は人肌を求め走り出した
「ここが異世界ならいるのかなぁ、エルフ」
出会うなら断然エルフがいいみんな美形だし何よりスタイルがいい
友達(嘘)に見せられた紙切れには耳の長いのが特徴の人間が豚みたいなのに襲われていた
彼はエルフはやっぱりこうでなくてはと言っていたがあれは何だったんだろうな
俺はあれこれ考えながら走っていせいか後ろから見ていた存在に気付かなかった
ぴゅっと言う音と同時に突然、腕に何か痛みを感じた
「なんだ?」
腕を見るとそこには矢が刺さっておりそこから真っ赤な血が流れだしていた
自分の血を見るのは二度目だな......
俺はそんなことを考えながら矢を当ててきたやつに向かい叫ぶ
「誰だ! 俺みたいな弱者を痛めつけて楽しむサディスト野郎は!」
痛む右腕を抑えながら右腕から矢を引き抜く
無理に引き抜いたせいか血が大量に流れだす
目の前の木から一人の人間、いや、人間にしては耳が異様に長かった一人(と思う)の女が降りてきた
「おお」
エルフだ、この世界で初めて人型の生物に会えた俺は歓喜する
(やっぱりかわいいなぁ、俺好みだ)
そんなことを考えてた俺とは裏腹にエルフの女の顔をこちらをにらんでいた。
「弱者? よくそんなことが言えるわね、黒龍を従え何を企んでいる!」
「え? 俺が使役者?」
その言葉に俺は言葉を失ってしまった
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