逆転裁○開廷 時にダンガン○ンパ

「おいっ、なんで優香がクラスのグルチャに入ってんだよ!? 誰が招待しやがった!?」


「いいから、黙って私に任せなさい」


「ゆ、優香姉さん!?」


 画像が表示された。そこには僕とその肩に頭を載せて微笑む本上さんが、花火を見上げて寄り添い、手を繋いでいた。


『…』『…』『…』『…』


グルチャ華蓮『きゃーっ! だ、誰が撮ったの!?』


グルチャ優香『私です』


『くそっ、山田爆発しろ!』『山田もげろ!』『山田しね!』


グルチャ坂下『告白もできない連中がとやかく言うな』


グルチャ朝倉『やったな、山田』


グルチャ野中『今度奢れよ?』


 うううっ、タンクトッパーズ兄さん! カッコイイッス! 憧れるッス!


グルチャ健『まあ、待て、皆。こんな状態になってても付き合ってないんだぞ? 生殺しだぞ?』


グルチャ華蓮『な、生殺しじゃないもん!』


グルチャ夏穂『でも付き合ってないんでしょ?』


グルチャ華蓮『つ、付き合ってないよ!』


『ざわざわ』『ざわざわ』『ざわざわ』『どういうこと?』


グルチャ優香『皆さん! 我々は大きな勘違いをしていたのです。

 黒崎さんの証言、本上さんの証言、証拠の写真。

 これら全てを俯瞰で捉えなくてはならないのです。どれかが欠けるだけで結論が変わってしまう、そういう問題なのです』


『ど、どういうこと?』『っていうか、優香って誰?』『ざわざわ』『ざわざわばっかり言うヤツなんなの? カイジファンなの?』


 このギャラリーのガヤ、何か逆転裁○を思い出すなぁ。


グルチャ夏穂『被告人の妹、優香ちゃん、どういうことなの?』


 めっちゃ説明入った! 委員長真面目!


グルチャ優香『いつから本上さんが被害者だと錯覚していた?

 この写真を見て、こんな恋する乙女の顔をする少女が被害者?


 否!


 全ては逆! 小悪魔に踊らされた哀れな童貞こそが被害者だったのです!』


グルチャタロー『ど、童貞言うな!』


グルチャ優香『黙れ童貞! お前にタローが救えるのか!』


 み、三輪さんかよ!


『ざわざわ』『ざわざわ』『ざわざわうるせーよ!』『どういうこと?』


グルチャ華蓮『ななななっ! ゆ、優香ちゃん、どういうことなの!?』


グルチャ優香『事件の始まりは一学期、本上さんが兄をタロー君と呼び始めたことに始まります。

 童貞の皆さん! 本上さんにファーストネームで呼ばれたらどう思いますか!?

 しかも、夏休みの勉強会に誘ってきたり、リンゴ飴奢ってくれたら浴衣で一緒に写真とってあげる、など!

 どうですか、童貞ども!』


 おい、口が悪くなってるぞ。


『惚れるな』『惚れる』『好き』『惚れてまうやろ』『告白する』


グルチャ華蓮『い、異議あり!』


グルチャ夏穂『異議を却下します。弁護人、続けてください』


グルチャ優香『そう! 惚れてまうのです!

 しかも偶然ながらプールで兄と遭遇した本上さんは、水着で一緒に写真を撮り、しかも帰りにはこんなツーショットを自ら、自らですよ? 自らツーショットを望んだのです!

 証拠写真を提出します』


グルチャ華蓮『Objection!(異議あり)』


グルチャ夏穂『I dismiss your objection.(異議を却下します)』


 偶然を強調するためか、四人の水着写真がアップロードされ、それに続いてバーガーショップのツーショットがアップロードされた。


『ざわざわ』『ざわざわうるせー!』『こ、これは!』『ちょっと、山田可哀想』『哀れな童貞』『童貞きもっ』


 おい、最後の! 議題と関係ないよね!?


グルチャ華蓮『や、やめてー!』


グルチャ夏穂『続けて』


グルチャ優香『お分かりでしょうか。本上さんがお兄ちゃんに、自ら胸を当てているのが!

 非童貞ならいざ知らず、童貞に惚れるなと言うのが無理と言うもの!

 しかも、この時から『タロー君』から『タロー』へと呼び方が変わり始めたのです!

 どうですか、皆さん!

 被害者が逆というのが、お分かりになりましたか?

 この後日、本上さんは独りで山田家を訪れ、ノワールのケーキを手土産に、家族に挨拶までしているのです!

 清楚なワンピース姿で!

 とても素敵なお姉様でした!』


グルチャ華蓮『きゃー! 違くないけど、言い方! 優香ちゃん、言い方!』


 『家族に挨拶だと!』『ぐぬぬっ』『ちょっと山田に同情するかも』『ノワール美味しいよね!』『本上さんがノワールのケーキ持って遊びに来るって、流石に妄想だろ?』


グルチャ優香『我が家での宿題会という名目でしたが、本上さんは既に宿題を終えていました。そうですね、本上さん?』


グルチャ華蓮『えっ? ええ、まぁそうですけど』


グルチャ優香『つまり、我が家を訪れたのは、山田太郎の宿題を見てあげる、ただそれだけの理由なのです!』


グルチャ華蓮『ち、違うもん! 優香ちゃんと遊ぶためだもん!』


グルチャ夏穂『その辺りはどうですか、弁護人?』


グルチャ優香『いえ、私と遊んでいたのは30分もありません。それも母からの詮索を躱すためです。

 アイドルが! モブ童貞のためだけに! 童貞の家を訪れる! ケーキを奢られるからではなく、ケーキを持参して! うちの母を『お母様』と呼んで!

 これを本上さんと山田太郎ではなく、アイドルとファンで想像してください。

 もうそのアイドル、ファンとできてますよね? 少なくともアイドルはファンのこと好きですよね?』


『くっ、否定できん』『山田だと想像できんが、AKBとファンなら確実に卒業だな』『いや、最近は卒業しないで有耶無耶だぞ?』『お母様だって!素敵!』


グルチャ優香『つまり! 客観的に見て、本上さんは山田太郎を好きだと思われても仕方ないのです!』


グルチャ華蓮『や、やめてー! 優香ちゃん、やめてよぅ!』


『認めざるを得ない』『認めたくない』『そんなのいや!』『山田最低だな』


グルチャタロー『ちょっと待て! 今の僕悪くないだろ!』


『『『『うるせぇ、てめえは黙ってろ!』』』』


 恐っ!


グルチャ優香『勉強で触れたり触れられたりしてトキメキメモリ、そして問題の夏祭りです。

 夏祭りでは足を挫いた本上さんは友人とはぐれ、兄は彼女をベンチで介抱していたのです!』


グルチャ夏穂『それで二人でベンチにいたのね』


 『ほほう、それから?』『俺はまだまだ認めん!』『ざわわざわわ』『ざわわはサトウキビ畑だろ』


グルチャ優香『ここで注意して欲しいのは、山田太郎が本上さんを暗がりに連れ込み、二人きりになろうとしたのではないということです。

 本上さんが足を挫いたのは偶然、そのためお友達とはぐれたのは必然、怪我した女の子を助けるのもまた?』


グルチャ朝倉、坂下、野中『漢(おとこ)ならば、当然よ!』


 『そりゃ必然だな』『まあ、致し方ない』『確かに怪我したのが委員長でも助けるぜ』『そうだな、流石に委員長でもな』


グルチャ夏穂『おいっ、最後のヤツら。良い度胸してるな?』


グルチャ健『馬鹿! ビンタされるぞ!』


 『『ひぃぃー! ごめんなさい!』』


グルチャ優香『皆さん、想像してください。学校のアイドルが自分をファーストネームで呼び、いつもと違う浴衣の艶姿を見せつけ、足を挫いたとしなだれかかる! それも、童貞に! イケメンでもない、モブ童貞に!』


「ゆ、優香! お兄ちゃんに酷いぞ! 助けるならディスらずに助けてくれ!」


「黙ってろ!」


「ひぃっ!」


 優香姉さんの目が恐いです。


 『し、しなだれかかるのか!』『羨ましい!』『それは惚れる』『女子から観てもそれはOKのサイン』『そこまでされて振られるとか、山田憐れ』『タロー情けな』『ヘタレ』『所詮はモブということか』


グルチャタロー『あ、憐れ言うな!』


グルチャ華蓮『な、なんか私が悪いの?』


グルチャ優香『本上さん、自分のことを好きかもと思っている山田太郎が、あなたの手を握ったとき、あなたはそれを振り払いましたか?』


グルチャ華蓮『い、いえ』


グルチャ優香『握り返しましたね?』


「優香、な、なんで知ってるんだ!」


「うるさい!」


「ひぃっ!」


グルチャ華蓮『うっ、に、握り返しました…』


グルチャ優香『来年は一緒に来たくないと言いましたか?』


グルチャ華蓮『い、いいえ、来年も一緒に来ようねと…』


『…』『…』『…』『…』


グルチャ優香『最後にもう一つ、私が最初に上げた写真。あなたから、山田太郎の肩に頭を載せましたね?』


グルチャ華蓮『の、載せました! わ、私が悪かったですー! うわーん!』


 『そこまでされて振られるとか』『山田憐れすぎ』『さすが童貞』『包茎』『ヘタレ山田』


 おい、包茎はやめろ!


グルチャ夏穂『判決を言い渡します!被告人山田太郎を被害者と認定。山田痴漢疑惑に関しては、情状酌量の余地があり、起訴猶予処分とします! 閉廷!』


『おおっ、山田、俺は信じてたぞ』『山田もげろ』『タロー憐れ』『所詮童貞』『一生童貞じゃね?』


グルチャタロー『助かったけど、何か釈然としない!』


グルチャ夏穂『そこまで行って振られるとか憐れでしかないわ』


グルチャタロー『うるさいよ!』


グルチャ華蓮『ふ、振ってないよ!』


グルチャタロー『もう、燃料投下するのはやめてくれ!』


『なんだなんだ』『わけわかめ』『魔性の女』『小悪魔華蓮ちゃん!』


グルチャ華蓮『好きって言われただけなの! 付き合ってって言われてないの!』


グルチャ健『なーかーま!』


グルチャ夏穂『貴様もかー!』


グルチャタロー『ち、違う!』


グルチャ華蓮『僕のこと、好きにさせるから、その時は華蓮から告白するんだよって!』


『ぎゃー、きもーい!』『きもい!』『キモ過ぎ』『やだキモっ』『イケメン気取り』『キモメン!』『身の程を知れ!』『それはイケメンに限るやつ』『鏡を見てから言え』『華蓮とか何様?』


グルチャタロー『ボ、ボロカス…、華蓮なんて呼んでないし!』


グルチャ優香『皆! モブ童貞がそんなイケメンセリフ吐けるはずがないよ! 恋する乙女が記憶を美化してるんだよ!』


 『こ、恋する乙女!?』『いやだ!聞きたくない!』『いやだ!俺は認めないぞ!』『そうだそうだ!恋する乙女なら付き合ってるはずだ!』


グルチャ華蓮『言ったもん! 美化してないもん! タロー、格好いいもん!』


 『いやだー、聞きたくない!』『だめだ手遅れだ』『えー?山田のどこがいいの?』『もげろ』『振られろ』『しね』『異世界転生しろ』


グルチャタロー『うるせー! 僕は本上華蓮が好きだー! 付き合いたいけど、ちゃんと本上さんが僕のこと好きって自覚してから付き合いたいんだ!』


坂下『山田、漢を見せたな』


朝倉『さすが我が好敵手(ライバル)』


野中『それでこそ武士(もののふ)』


グルチャ夏穂『山田、いとあはれなりけり』


グルチャ優香『そういう訳だから、もう皆邪魔しないであげてね! 本上さんはまた子供だから、あんまり恋愛のことで責めちゃダメだよ?』


グルチャ夏穂『了解』


グルチャ華蓮『こ、子供じゃないもん! 立派なレディだもん!』


グルチャ夏穂『立派なレディはここまで童貞を弄(もてあそ)びません』


グルチャ優香『本上さん、山田太郎が他の女の子とデートしたり、付き合ったらどう? あの夏祭りの写真が他の女の子だったら?』


グルチャ華蓮『そ、そんなの、嫌だけど…』 


グルチャタロー『いいから、皆止めてくれ! そんなに外堀埋めて追い込まれても好きって言ってもらえない僕の気持ちを考えてくれ! マジで切ないんだよ! いい加減泣くぞ!』


『な、なんかごめんな、山田』『確かに憐れだな』『山田、可哀想』『普通好きって言われるのに、何か山田に致命的な問題があるんじゃね?』『やっぱ童貞だからか?』『包茎だろ?』


グルチャ華蓮『うわーん!』


『華蓮さんが退出しました』


『お前等が虐めるからだぞ!』『いや、お前だろ!』『いや、山田がヘタレだからだ』『童貞だからじゃね?』『包茎だからだよ!』


 さっきから童貞包茎しつこい奴が居るな! 仮性だよ!




華蓮『ごめんね、タロー』


タロー『ううん、僕のせいだよ。こっちこそごめん』


華蓮『私、ちゃんと考えてるから! いい加減な気持ちで返事したくないから、もうちょっと待ってくれる?』


タロー『うん』


華蓮『一回だけ華蓮って呼んで』


タロー『か、いや、ダメ。付き合ってから!』


華蓮『そっか』


タロー『うん』


華蓮『決めた。しばらく連絡しない』


タロー『えっ?』


華蓮『元々しばらく会えないんだ。だから次会うときまでよく考えてみるね』


タロー『うん…分かった』


華蓮『じゃあ、元気でね、ばいばい』


 えっ、何かもう会えないとかじゃないよね?


『華蓮さんが退出しました』

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