第7話
体育の授業、それは僕の嫌いな教科の中でもトップを争う教科である。それも、今は真夏であり、授業場所は校庭であり、内容はソフトボールだから、という意味だ。
女子は今頃体育館でダンスをしているはずだ。
非情にやる気が起きない。大体、僕は運動が苦手だ。
小学生の頃に一度だけサッカーなる遊びに参加したことがあるが、失敗の連続で味方からも文句を言われた。
勿論、捻挫と筋肉痛が襲い掛かってきた。
僕の体は、驚くほどに脆くて貧弱で、しかも運動音痴ときた。これでソフトボールをしろというのは過酷というよりも鬼畜の域だと思う。
僕と日常的によく会話する
友人を悪く言うくらい、今の僕の機嫌が底辺に位置する。もう、本当にやる気が起きない。
「それじゃあ、クラスのグループごとに分かれて自主錬しろ」
体育の教師――そこまで厳つくは無いが怒ると泣く生徒がいるレベル――の指示を聞いて、全員が声を挙げて動き始めた。
半数近くが楽しそうな表情だ。狂ってる。
「・・・・・・・・・・・・・さて、僕も動こうかな」
流石にあの教師に仮病を使うのは無理があるから、最低限の力でやろうと思う。グローブとボールを手に持ってグランドの中に行き、僕は1人でホームネット目掛けてボールを投げる。
先程、教師が「グループに分かれて自主錬」と言ったが、それについての人数は指定されていない。この学校の特徴とも言えることで、人数が指定されていない場合はたとえ1人であってもグループとして認定されるのだ。
げんに、教師の目は僕の事を捉えているが、その口から肉食獣の如き裂帛の音は発せられない。あの音が聞こえた日には、僕は恐怖からか授業の間集中出来なかった。
まあ、その状態を他の人が見てもいつもと変わらないように見えたようだ。解せぬ。
グローブの中にあるボールを手に握って、僕はボールネット目掛けて肩を振り上げた。流れるような動作で重心を傾けてボールを手の中から放す!
――ブンッ!・・・・・・・・・・・・・・・・・・ッ。
ボールネットからおよそ50M《メートル》程の距離だったが、もう少し離れた方が良いみたいだった。
ネットの一番上辺りに当たったボールはそのまま落下し、着地と同時に跳ね返って――
「よっと」
――僕がキャッチした。
そのまま、今度は60M程離れてから投げる。さっきと同じように構えて――放つ!
――ブォン!!・・・・・・・・・・・・・・・・ッ。
先程と変わらなかった。またもやネットの上辺りに衝突して、落下していく。どうしてだろうか、先程からクラスメイトからの視線を感じる。
けれど、そんな事は気にせずに、今度は70M程下がってから投げる。
余裕。
――80
成功。
――90
まだ下がれる。
――100
そろそろ無理だと思う。
そして大詰めの110。多分、今の僕が決められるのはこの距離が最高だと思う。
「フッ!」
――ヒュン!!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ッ。
上空へと高速で解き放たれたボールはそのままネットの前まで飛来し、その中心へと吸い込まれるように飛来し、そして落下した。
やはり、このくらいが最高のようだ。ボールがネットの半分よりも上に当たるようにするのは、110が最高だと分かった。
(さてと、そろそろ皆終わったかな?)
時計を見れば、授業の終了まで残り少しだった。いつもならここで片付けを始めている生徒達は――
『・・・・・・・・・・・・』
――黙って僕を凝視している。
まるで、一般人が軍人にあったような顔だ。酷い。僕の顔は筋肉と日焼けで固まった茶色の緑人とは違うのだ。
そんなコトを考えながら終えた体育の授業。勿論その後で体調は悪くなった。
まったく、僕の体は非力で軟弱なのだから運動させないで欲しい。
=========-
~後書き~
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