2012.10.31 疾風③ 07
日の出の光を感じて目を開けると、朱美の顔がすぐそばにあった。
お互いの体を枕にして、寄り添って二人で眠っていた。
朱美は欠伸をしながら、寂しそうな笑みを浮かべた。
『体調崩したら、病院に付き合ってよね』
結局、告白もなにもできなかった。
まぁいいか。仲直りもできたから、これでいい。告白して、変な空気にするべきではない。ヘタれだから仕方ない。
一ヶ月後、体調を崩した朱美の付き添いで、疾風は病院に行った。
野宿の影響が、一ヶ月後の体調に響いたとは考えにくいが、約束を守った。
そこで、妊娠が発覚したのだ。
色々あった。
朱美の力になる中で、疾風は戻れないほどに壊れていった。
キヨや龍浪に狂っていると揶揄されながらも、朱美の出産に賛成した。
「そういや、この前あいつらに会ったぞ。相変わらず仲良しだな。あの二人」
「遥と隼人のこと言ってる?」
「隼人には、まだ遥の父親って勘違いされてたのには、笑えなかったな」
もしかしたら、あの夏祭りの日に告白していたら、花火そっちのけで抱き合い、そのままどこかで避妊せずにセックスしていたかもしれない。あの日が危険日だったのは、遥の存在から考えても明らかだ。
なにかが違っていれば、本当に遥の父親になれていたのに。
「最近、子育てが大変なのよ」
それも手伝えていたかもしれない。
そういう人生があったかもしれないと考えても意味がない。
過去を嘆くよりも、未来の糧になることを口にしよう。
「これからが本番だぞ。十代の反抗期はハードだからな。彼女の弟がやんちゃ過ぎて、困ってるんだよ」
「遥のおしめを取り替えるよりも大変?」
「あれはあれで大変だったな。まぁ、別のベクトルだ。思春期のガキどもは、オッサンになった俺に面白い夢を見させてくれるんだけど、そのケツ持ちしてたら、割に合わないって感じるときもあるからよ」
「だから、結論としたら、どっちが大変なのよ?」
「俺的には、おしめ交換のほうが楽だった」
「シップーに聞いても意味なかったかもしれないね。だって、ロリコンのあんたからしたらおしめ交換はご褒美だったかもしんないし」
「さすがに、そこまで守備範囲広くねぇよ」
「あれ? 小学生のときに知り合った幼女が、中学生になったところで、手を出してなかったっけ?」
「なんのことだ?」
「そういう噂をきいたことがあるだけ」
脇見せずとも、朱美の表情が想像できる。疾風のエロビデオを発見したときの顔をしているのだろ、どうせ。
「何度でも言ってあげる。目立つからね、この車」
「これからは、エロビデオも下手に借りにいけねぇな」
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