四月中旬


卯月(4/20)


 新緑が益々眩しい。夕方に川沿いを自転車で行くと、大きな蚊柱が幾本も立ち、夕陽を受けて金色に輝いている。燕は今や好機と縦横無尽に風を切って空を飛び交う。

 河川敷を白く覆っているのは浜大根の花だろうか。葉桜の季節ももう終わり、藤や躑躅つつじ、菜の花、ヒメジョオン、野原の草は枚挙に暇がないほど花盛り。草や木のその全ての名前を知らないのが少し寂しい。

 土手の風は冷たいが、冬の冴えるような冷たさではなく、少し湿って柔らかい。


 日中は窓を開けているくらいが丁度良い。窓外を眺めていると虫や鳥が間断なく訪ねて来る。ひっきりなしにカナヘビやお腹の膨れた蜥蜴とかげが地を這っている。


 四十雀しじゅうからの番は仲睦まじく求愛給餌をしている。咥えているのは柔らかそうな芋虫。これから子育ての季節にかけて、鳥たちの主食は蛋白質豊富な虫になる。


 脚長蜂が仙人掌さぼてん棚の下に小さく可愛い巣を付けた。大きさはまだビー玉くらい。女王蜂が一匹で、慈しむように巣を作っている。人のよく通るところなので今の内に対処した方が良いのだが、あんまり健気に見えるのでずっと観察していたい。


 薄赤かった金木犀の新芽が青々としてきた。葉緑体を作って、これからは盛んに光合成をする。数年前に大きく刈り込んだ時の傷はまだ癒えていないだろうが、その傷を全く隠してしまうくらいによく葉が茂っている。

 去年の台風で傷んだ柿の木も柔らかな若葉を沢山付けて、日に日に青くなっていく。この分ならば次の秋には実を付けてくれるだろう。


 蕗がにょきにょきと生えてくる。競争熾烈な雑草群落の中で、一身に光を浴びようと傘のような大きな葉を広げている。傘の下の花韮の花は散って、葉もぐったりと力なく倒れている。


 先日、筍の天麩羅を食べた。今年は不作の年だそう。中までよく火の通った筍はホクホクしていてとても美味しい。塩で食べると風味が際立って善し。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る