十一月中旬


 霜月(11・15)


 掃除をしていたら湯呑茶碗の飾り棚で脚高蜘蛛あしだかぐもの亡骸を見つけた。茶碗と一緒に陳列されているかのように、こちらを向いて事切れていた。夏に幾度も顔を出していた奴だろう。

 飾り棚はちょうど枕元の位置にある。今年の夏、私が眠っている間ゴキブリの侵略から守ってくれていたのかと思うとひとしおの感慨があった。


 空気が一段と冷たくなった。真昼でも窓を開けていると肌寒い。蜜柑を十個ほど収穫した。まだ半分は枝に残っている。夜、部屋の灯りに照らされる蜜柑の橙色は、背後の夜闇に浮かんでいるようである。


 日が傾くのが早い。二時を過ぎるともう、庭の千両が斜めに影を落とし始める。


 空は雲一つなく晴れ渡っている。


 帰り道。今季初めてポケットに手を突っ込んだ。

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