第4話 諜報課の評価
「さて、感想を聞こうか」
メイフィが
何しろこの部屋は、他のどの部屋よりも機密性が高い。
課員が普通に働いているが、彼らは拷問されても機密を漏らさないよう教育されているのだ。
更に言えば、リーナを談話室に連れて行くのは非常に難しい。
まず、彼女の気を良くさせるために、いつもの面倒な会話を全て返す必要があり、時々ユーモアを交える必要もあるだろう。
そして、場所移動を提案し、拒否するであろう彼女を根気よく説得して、彼女が折れるまで粘り強く話し続ける必要がある。
そんなに
要は聞かれたくない者をこの部屋から排除すればいいのだ。
『ボクの方も聞こうか。君は、部長の事をどう思っているんだい? ラブ? ライク?』
「私の質問に答えろ」
リーナはいつものように、軽口から入ろうとし、ヴェルムがそれを遮る。
毎度の事ではあるが、リーナが諦めることはない。
『キミのそういうところ、直した方がいいと思う。別にさ、ボクも毎回付き合えって言ってるわけじゃないんだよ。たださ、たまにはこういう遊び心がないと──』
「さっさとしないと、お前が書いた、シャムレナを男化させて私を襲わせた本の事をあいつに言うぞ?」
『やめて! そんなことしたらどうなると思ってんの! 君は
リーナが声を荒げる、というよりも悲鳴を上げた。
「だったら早く言え。私も今日は外に営業に出る。時間はそんなにないのだ」
『分かったよ……ていうか、君は自分がボクの本に出て来ることは全然気にしないんだね?』
「怒ればやめるのならいくらでも怒る。そうでないなら
あっさりそう言われた。
やめろと言ってもやめないなら、言うだけ無駄だ、という事だろう。
『で、何の話だっけ?』
「先にシャムレナと話をしてくるか」
『待って! やめて! 言うから!』
再び、リーナの悲鳴。
「本当に時間がない。早く言え」
ヴェルムは表情を変えないまま急かす。
若干イラついているのは本当だろう。
『分かったよ、全く……あの子はうちで引き取ってもいいよ。ううん、あの子、うちに欲しい。潜入工作員としてはかなり優秀だよ、彼女』
「分析の方はどうだ?」
『そっちは全然。根本から教えないとだめだろうね。一年二年じゃ結果は出ないだろうね。だけど、それを補って余りあるくらい、潜入工作は凄いよ』
ちなみに、リーナ自身は潜入どころか、一般的な聞き込みすら出来ない。
彼女は分析能力だけでここまで来たのだ。
確かに、彼女が持っていない部分をメイフィが補完するとすれば、二人で最高のパフォーマンスを発揮することだろう。
「だが、潜入工作にはリスクがある。捕まった時、場合によっては拷問にかけられるだろう。あいつはそれに対処が出来るのか?」
潜入工作というのは、大まかな手法はあっても完全なマニュアルはない。
その場その場の対応が求められ、間違えると死ぬこともあるし、捕らえられ、拷問されて情報を洗いざらい吐かされる事もある。
それを回避し、また拷問に耐えることが出来るのか、という事だ。
『そこまではまだ分からないよ、捕まったことないし。だけど、そういう事は教えればいいんだし、最後には逃げたり戦ったりで、運動能力が物を言うとは思うんだ。だから、彼女は潜入工作には最適な人材だと思う』
「そうか、分かった」
彼女は、本当にいい人材のようだ。
「それではまた来る」
『え? あの子、どうなるの?』
立ち去ろうとしていたヴェルムの背後に、リーナが訊く。
「最終的に全課を回ってから決める方針だ」
『そっか、で、次の課はどこなの?』
それに振り返ることなく、ヴェルムが答える。
「今日からは、
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