第二章 生きるために仕事をする

序幕

 金儲けをする、という行為を単純に定義すると、社会に対して貢献することで、社会から対価を得る、という事になる。

 そして、社会、とは、自分を含み一人以上の他人を含むコミュニティを指す。

 それは自分の地域の人間だったり、世界中だったり、または自分の所属する会社であったり、人によって様々だ。

 そして、貢献方法も人それぞれ様々だ。

 料理を作って人の腹を満足させる者がいる。

 その彼に採集した食材を提供する者がいる。

 そして、自分の所属する会社に利益を与える者もいる。

 更に彼らを支える者がいる。

 会社という組織は、組織自体が金儲け出来るよう、それぞれが別の貢献で支え合っている。

 彼らは基本的に大人数で組織されていることが多いが、実際、直接的に会社を儲けさせている者は案外少ない。

 ほとんどの者が二次的に貢献しているのが事実だ。

 金融で言えば、融資が渋られた際の暴力装置となる者、融資や返済についての情報を集め、分析する者などがいて、それぞれは貢献に見合って、直接利益を上げている者と等しく給与を得ている。

 そして、更に間接的になるが、それらの者たちを統括する者、育てる者、という人材がどうしても必要になる。

 組織の上部になればなるほど、直接的な貢献よりも間接的な貢献を求められる。

 人をまとめ、指示する。

 人がそれぞれ自分の与えられた目的のみをこなせるように、大きな視線で有機的に動かせるための行為だ。

 そして人を育てる。

 これは自分の積んできた経験やノウハウを、部下に短期間に積ませて、より成長させるために教授する行為だ。

 だがこれは、何でも卒なくこなして来た者、才能のあった者は逆に困難であることも多い。

 彼らは理解出来ないのだ、「理解出来ない」という事を。

 自分が誰にも教わらず一日で習得したことを、どうしてこいつは教えてやったのに一月もかかって、まだ習得出来ないのだろう?

 逆もまたしかりだ。

 才能が全くなく、努力のみで成長してきた者は、何故こいつは何の努力もしないのか、理解出来ない。

 であるから、教える者、教えられる者はともに相手を理解し、双方の気持ちを理解する必要がある。

 この人は何を教えるつもりなのか、この人は何を理解出来ていないのか、その気持ちを合わせることで、より効果的にノウハウが伝わると言ってもいい。

 ただしそれは大抵の場合、不可能か、またはそれに近いほど困難な事なのだが。

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