第14話
「でしょう、でしょう」
私が同意すると彼女は喜びました。
私たちはずいぶん長いあいだ話に花を咲かせました。
さながら女子会のようでした。
そろそろ時間も遅くなってきたので、立ち去り難くはありましたが私が腰をあげると、メスのクワは私にあるお願いをしてきました。
彼女が想いを寄せるオスのクワに彼女の葉を1枚届けて欲しいと言うのです。
私は快く承諾しました。
近くで見る彼女の意中のオスのクワはとても大きくて立派でした。
なかなかのイケメンです。
私が彼女のことを告げると、「知ってるよ、可愛い子だと僕も思ってた」と嬉しそうに言いました。
私が腕を伸ばすと彼女の一葉は踊るようにヒラヒラと舞い、オスのクワの中に吸い込まれていきました。
その日私は夢を見ました。
夢の中であの大きなオスのクワが立っていました。
とても気持ちのいい風が吹き、クワはさわさわとその葉を散らしました。
その中の1枚が長い風に乗ってどこまでも飛んで行きます。
どこまでもどこまでも。
長い旅の先にはあの若いメスのクワがいました。
そこで私は目を覚ましました。
彼らは上手くいく。
私は思いました。
私が見たのは夢ではなく現実なのだと思います。
私も植物のように受粉できたらいいのにと思います。
人間の男性と交わるのは私には無理そうです。
研究者の彼とのことを思い出しただけで、塩で溶けたナメクジを飲まされたような吐き気を感じ、気持ち悪さにのたうち回りたくなります。
もし愛があれば、あれらの行為を受け入れられるようになるのでしょうか?
その前に私は人間の男性を愛せるのでしょうか?
答えはすぐに出ました。
ノー。
分かっていたことです。
私は今までに1度も、そしてこれからもずっと男性を愛すことはできないのです。
男性を愛し、男性を受け入れるのが女ならば、私は女にはなれません。
女でない私はなんなのでしょう?
やはりここにも絶対的存在がありました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます