第3話
植物たちと話すのは楽しくていつまでも一緒にいられました。
それとは反対に人間の子どもと遊ぶのは私には苦痛でした。
何かといろいろなルールがあって、そして基本みんなと同じでなければいけませんでした。
それに反すると仲間外れにされました。
それは小さな世界に君臨する絶対的存在でした。
仲間外れにされた私はちょうどいいとばかりに、1人で過ごす——本当は1人ではなく植物たちと一緒にですが——時間を満喫しました。
休み時間はいつも校庭の隅にある花壇で花たちとおしゃべりをしていました。
その日も私は赤と黄色のチューリップと楽しく話をしていました。
2本のチューリップは恋人同士でした。
彼らの話が面白すぎて私は大声をあげて笑いました。
私は知りませんでした。
その日私を仲間外れにした女の子たちが私をつけてきていることを。
私のことはあっという間にクラス中に知れ渡りました。
『変人』とクラスの男の子たちにからかわれ、女の子は遠巻きに私のことを見るだけで、私に話しかけてくる者は誰もいなくなりました。
それに気づいたクラスの担任の先生は私の母親を呼び出しました。
その日母のハンカチを握りしめる手が小さく震えていました。
「この子は普通の子です。この子は普通の子です」
母は何度も繰り返していました。
帰り道、小さく震えていた手で痛いほど強く手を握られながら家に帰りました。
母は泣いてはいませんでした。
でも怒っていました。
てっきり私に怒っているのだと思ったら違いました。
「識子は普通の子なのに、なによねあの先生。おかしいのはあの先生の方よね。そうよね、識子は普通の子よね」
私は普通の子です。
私がうなずくと母は鼻を膨らませて満足そうな顔をしました。
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