虚構篇

1st

気持ち悪い。

いきなり覚醒したみたいに目が覚める。

首に違和感を感じる。

「うっ………うぇぇ………うぁぅ………」

吐き気がしてトイレに駆け込む。

「うぅぅ………うぇぇ……」

胃酸が逆流して口で全部出てしまう。

「はぁ、うあぁ、はぁ、ははぁ、はあぁ」

気持ち悪い。

気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。

「はぁはぁはぁ!はぁ!あぁ!」

首の違和感が消えない。

気持ち悪くて何度か爪で引っ掻いてしまう。

「はっはぁ、あっうっあ、っあぁ」

息を切らし嗚咽が口から漏れる。


「───────────はぁぁぁぁ」

やっと気持ち悪さ、違和感、吐き気が落ち着いた頃には全身汗だくだった。

「……………うへぇ」

酷く重く感じる身体をなんとか立ち上がらせる。

「首辺りに……違和感が………」

首への違和感は、さっきよりマシだけど、まだまだ残っている。

「着替えよう」

パジャマを脱ぎ捨て制服に袖を通す。

「こりゃ酷い」

鏡を見ると、私の首が引っ掻き傷がたくさんついている。

さっき引っ掻いたせいだろう。

それにしても引っ掻きすぎたな。傷だらけじゃん。

制服のブラウスの襟と髪で誤魔化せるけど────それにしても酷いな。

「叔父さん、そろそろ起きるな………」

案の定叔父さんが起きてくる。

「お前がこんなに早くに起きるなんて………!明日は雪だな!」

「五月に雪が降ってたまるか!!」

あれ?似たようなやりとりを前もしたような────────。

「どうしたの?」

ボケッと棒立ちしている私を心配する叔父の声

「……ちょっと寝惚けてるだけ」

「ふうん、顔洗えば目が覚めるんじゃない?」

「今洗うとこ」

さっきの会話は普通の日常的な会話なのに、どうしてこんなにも違和感を感じるんだろう?

「…………………」


一度抱いた違和感は消えない。

黙々といつも通りの朝食を食べ進める。

違和感の正体が分からない苛立ちから珈琲を一気飲みする。

「あっちぃぃ………!!」

ピンポーン、ピポピポピンポーン、ピンポーン。

インターフォンのチャイムが連続して鳴る。

「ん?」

セールスだったらキレそう。

玄関の扉を乱暴に開ける。

「摂津ちゃんおはよー」

「お前か……………」

なるほど道理でうるさいわけだ。

朝の六時半にインターフォンを連続で押してた犯人は───神崎かんざき勇気ゆうき

一応友人。向こうはどう思ってるから知らないけど。

「神崎………なんの用?」

「一緒に学校行こ」

「いやいやいや学校違うじゃん」

「僕、転校してきたから摂津ちゃんと一緒の学校だよ」

「マジか……お前という男は全然読めないな」

「ははっ褒められちゃった」

褒めてねーよ。

「摂津ちゃん早く行こう。今から僕と一緒に徒歩で学校行っても間に合うでしょ?」

えぇそうですね。それを狙ってこの時間に来たんですね。なるほど理解した。

「ささっ早く準備しちゃいな」

「十分待って」

「うんうん待つ待つ。いくらでも待つよー」

「そういうとこが軽薄そうって言われんだよ」


本当に神崎は突拍子のないことを色々とやってくれるよな。

「…………摂津ちゃん」

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