周回パラドックス

紅咲葵

夢幻篇

1st

かなうちゃん、早くしないと学校遅れちゃうよ~」

「もう!叔父さんそんなことは分かってんの!だから急いでんだってば!」

「ほらっ髪……女の子なんだしちゃんと櫛で整えて」

「はいはいはい。分かりました!!だ・か・ら急かすな!」

「分かった分かった、俺は仕事行くから戸締りよろしくね」

「大丈夫!戸締りは忘れたことないから!」

叔父さんったらいつまでもガキ扱いすんだから。

私、一応中学生なんだけど…………せめて年相応の対応をして欲しいものだ。


まあ、こんな風に朝叔父さんに起こされて慌ただしく身支度するのが日常化している。

「そろそろ学校に行かないとマズイな………」

制服の袖に腕を通す。靴を履き、玄関の鍵を締める。


自転車に跨がりペダルを踏む。


いつもの通学路を十数分もペダルを漕ぎ続ければ学校に到着する。

自転車置き場に自転車を置くと全速力で教室へ向かう。

「遅刻五分前ギリギリセーフ」

「お前はもうちょっと早く余裕を持って学校にこれないのか?」

真後ろから担任の呆れた声が聞こえた。

「遅刻一回もしてないんですからいいじゃないですか。今日も間に合いましたし」

「俺は毎日ヒヤヒヤしてるよ」

溜め息混じりにそう言われ腹が立つ。

言い方があからさますぎる。

「何故、入学してから今日まで無遅刻欠席二日早退三回ですよ?それなのに文句言われなきゃいけないんですか?」

少し悪意を込めて私は言う。

「悪い悪い。でも一部の奴は迷惑してるんだ気を付けてくれ」

「遅刻常習犯の先生に言われたくありません」

相変わらず腹が立つ担任だな。

言い方が嫌味ってレベル越えてる。


ああいうお気に入りの生徒と嫌いな生徒とで態度があからさまに違う担任って面倒なんだよね、ということを思いながら席につく。



退屈な授業を右から左へと聞き流し放課後になるのを待つ。

さっさと帰りたい。

先生の長い終わりの挨拶を聞きながら小さく呟く。


キーンコーンカンコーン

チャイムだ!

先生は無駄話をやめ委員長がさよならの号令を出しクラス全員でさよならと言うとダッシュで私は教室を飛び出し自転車置き場の自転車を回収する。

後は家に向かって安全運転で走行する。


後はこの横断歩道の信号が青色に変わるのを待つだけ─────のはずだった。

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