(1)

運命がこちらに傾いた。ただ僅かな、小さな出来事。それだけなのに、どうしてこんなに心を掻き乱されるのか。約束などなかったことにして破ってしまえばいい。

もうすぐ終わる。もうすぐ貴方に会える。こんなものは消えるのだと、無くなってしまうと知っているのに……それなのになんだろうこの感情は……。どうして……ここまでは予定通りなのに。

これは……水? 私の目から……私は、泣いている……? フフ……ハハハッ……どうしてこんな機能をつけたのですか。道化師が何を言っているのでしょう。私は感情を表に出してはいけない。これが私の存在意義であり、これが守れないのなら……私は私ではないのだ。

……大丈夫だ。今は、まだ目覚めていないから……心の拠り所がなくなっているから弱くなっただけ。そう、大丈夫……私私私俺俺は僕僕僕は大丈夫……。

さて、最期のステージになりました。愛しの我が主に忠誠を……。



【昼下がりのボート】

鳥の鳴き声が遠くから聞こえた。ここは森の中の小さな湖。

葉が風に揺れる、水が流れる。静かな、僕たちだけの場所。僕と君だけの秘密を閉じ込める世界。

「アリス、次はどんなお話がいい?」

寝転びながら僕が聞く。

「そうだわ!」

パチンと手を叩いて立ち上がった。

「私そろそろ行かないと。今日はママがマフィンを焼いてくれるのよ!」

そう言って、彼女は笑った。

ボートから飛び降りて、僕に手を振りながら遠くへ行くアリス。

いつもと同じはずなのに、なぜかそれがとても寂しいことのように思えて……僕はその方向に手を伸ばしていた。

彼女が喜ぶ話をもっと考えないと。どうしたら僕の側にずっと、いてくれるんだろう。

君もいつか気づくはずだ。僕の想いに……この関係が普通ではないことに。

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