キミにはもう惑わされない。

@mari-rika

第1話 プロローグ~囁き~

 私、古賀 悠(こが はるか)は、現在中学2年生。

 ストレートヘアの長めの黒髪をポニーテールにし、前髪は少し流したりして、ほんのすこしだけど、こだわっている。

 部活でほんのり焼けた肌、長いわけでも細いわけでもない脚、そして腰にはくびれなんて存在しない――

 9月12日生まれ、乙女座、A型……真面目でも不真面目でもない、優等生未満、成績も中の上くらい……というように。

 これといった特徴もない私の自己紹介はこれで充分だろう。


「こはるーっ」


 不意に聞こえた声は、もう何年も前から聞き慣れたものだった。

 橋元 莉勇(はしもと りお)――同じクラスの、幼馴染み。

 私を“こはる”と呼ぶ人なんていくらでもいるけど、聞き慣れた声には思わず反応してしまう。

 古賀悠、他にも見澤 晴夏(みさわ はるか)ちゃんという子がいるから、区別するために私を“こはる”、彼女を“みはる”と、皆は呼ぶ。


「久しぶりにこはるって呼んだわ」


 そう言って笑う莉勇の笑顔は、今日も輝いていた。

 莉勇は、無駄にモテる。

 ラブレターなんて私が知ってるだけで3通貰ってたから、他にもあるだろうし、告白を受けたのも見たことがある。それに、メールなどで告白されたのもスクショが送られてきて見たことがあった。


「莉勇……そんなことしたら目立つから」


 目立つのを嫌う私は、莉勇が寄ってくるのを避けている。

 これで変な噂をたてられたりしたら、目立つ上に反感買うし。

 莉勇のファンとか、莉勇を本気で好きな人にいろいろ言われる未来くらいちゃんと見えてますから。


「うっわぁ、こはる冷たー」

「そういうのもいらないから」


 私はバッサリ切ると、莉勇が私の耳元で囁いた。


「俺、本気出しちゃうよ?」

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