私も子供が欲しい!

『文句言うばっかりで自分じゃ何もしない連中に子育ての何が分かるって言うんだ…!』


そんなことを考えてしまってその場の勢いで、


『ミハエル! 私も子供が欲しい!』


と言い放ってしまったアオだったけれど、それでも最低限の冷静さはあった。もちろん、吸血鬼であるミハエルとの子供となればエンディミオンと同じくダンピールが生まれる可能性が高いことも分かっている。


加えて、ロシア系の人間の特徴を持つミハエルとの間の子であれば、十中八九、とても日本人とは思えない容姿の子供になるだろう。


『日本人じゃねーじゃねーか!』


などと揶揄されることも分かっている。しかし、現に完全に外国人としか思えない外見を有しつつも日本に生まれ育ち外国語も話せずメンタリティも日本人以外の何者でもないという者もいるではないか。


「本気なんだね…?」


仕事を終えたさくらがあきらを迎えに来て二人が帰った後、ミハエルが静かに尋ねた。吸い込まれそうなほどに透き通った碧い瞳が、アオを見詰めている。


「もちろんだよ。さくらがエンディミオンを受け入れたのと同じだ。私はミハエルの子供を生んで育てたい。今、猛烈にミハエルの子供が欲しいんだ。私の命が、私の本能が、叫んでる。


『私とミハエルの命を、次に繋げたい!!』


ってさ。生まれてくるのがダンピールでも日本人に見えなくても関係ない。私とミハエルの命が合わさってできた命だ。私はそれを守る。


ごちゃごちゃ言う奴らのことなんか知るか!


それに、ミハエルだってエンディミオンだって人間と折り合って生きられるんだ。生まれてくる子供がダンピールだったとしても大丈夫だよ。私がその子を受け止める。受け入れる。誰にもそれを肩代わりさせない。『生まれてきてくれてありがとう』って、私が自分で言う。『生まれてきて良かった』って思わせてあげる。


私は、どうすればそう思わせてあげられるか分かったよ。あとは実践するだけだ!」


拳を握り締めて熱くそう語るアオに、ミハエルは目を細めていた。


『彼女となら、僕の子供達もきっと幸せになれるだろうな……』


確かにそう思えた。


だから彼女を受け入れた。『二年後くらいに』とアオは言ったけれど、今の彼女ならすぐに子供ができたとしてもたぶん大丈夫だろう。もちろん自分も彼女と一緒に育てる。彼女に任せきりにはしない。


そしてその夜、アオとミハエルは結ばれた。


「愛してる、ミハエル……」


「僕もだよ、アオ……」


初めて一緒にお風呂に入った時の醜態が嘘のように、アオは自然と素直にミハエルの前で自分のすべてを晒すことができた。そして彼に抱かれる喜びに蕩けることができたのだった。


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