お前も本当に
エリカと
自分の存在がたくさんの命の上に成り立っていることを改めて実感したからだった。それを思えば、少々のことで泣き言などこぼしていられないと思った。
そして、誰かに伝えたいことがあるのならきちんと言葉にして伝えないといけないと思った。伝えるべきことを伝えずに命を終わらせたりして後悔したくなかったからだ。
だからエンディミオンへの気持ちも正直に口にした。
湯船に浸かりながら、自分の想いを言葉にする。
「私の為にたくさんの努力をしてくれありがとう。あなたのおかげで私はたくさんのことを知ることができた。私はこれまでよりもっと私になれた。今の私を作ってくれたのはあなたなんだよ、エンディミオン」
「……俺は別に何も……」
エンディミオンはただ、自分の目的のためにさくらを利用しただけのつもりだった。彼女を守ったのも、結局はそのためだ。彼女のためにと思ったわけじゃない。
けれど、
「まあ…お前と一緒にいられたのは悪い気はしなかったがな……」
と、顔を背けながらだが彼も応えた。
そんな彼に、さくらは再び顔を寄せて唇を重ねる。その上で、
「私、あなたの子供が欲しい……!」
はっきりとそう告げた。
「命は繋がってる。エリカさんと秋生さんの命も洸に繋がってる。私は、あなたの命を次に繋げたい」
さくらの言葉に、エンディミオンの表情が曇る。
「…俺は、ダンピールだぞ……生まれてくる子供も、たぶん、ダンピールだ。呪われた命なんだ……」
エンディミオンのその言葉は、自らの半生を思えばこそのものだっただろう。けれどさくらは言う。
「だけどあなたは、ミハエルくんを殺さなかった。あなたに掛けられた呪いは、もう、解けてるんだよ。たとえ呪いが残ってたとしても、私も一緒に背負う。あなたと一緒なら、それができる……!」
彼をまっすぐに見詰めて、本心をぶつける。
「……あ……」
エンディミオンは何かを言おうとして、でも言葉にならなくて、さくらを見詰め返した。その目に僅かに光るものが見えた気がしたが、エンディミオンは湯をすくって自分の顔にばしゃんとかけた。
それから、
「……お前も本当に馬鹿だな……一緒に地獄に落ちることになるかもしれないんだぞ……」
と、顔から湯を滴らせながら呟くように言った。
けれど、さくらは微笑む。
「地獄なんてないよ。自分が生きた記憶がこの世界に残るだけ。私はそれを見たんだから。
もし地獄なんてものがあるとしたら、それはこの世にこそあるんだよ、だけどあなたは、私を地獄になんて堕とさないでしょ?」
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