読者様はお客様、視聴者様はお客様、お客様は神様

「世界的にも人気の高い、海賊の少年の冒険活劇にも、宇宙から来た戦闘種族が果て無き強さを求める物語にも、<神様>と評される偉大な大先輩が生み出した数々の名作にすら、<アンチ>と呼ばれる連中がいる。『面白くない』『つまらない』『くだらない』『粗が目立つ』と叩く奴はいるのだ。


どれほど『読者の為』『視聴者の為』と唱えようとも、それがまぎれもない現実だ。読んだ者、視た者すべてを無条件で満足させるものなど作れはしない。


今、二期が絶賛炎上中のアニメの一期でさえ、それを無条件で高く評価しているのは<信者>とも称されるごくごく一部の者達だけだ。その者達は、<アニメ好き>と称される者達の何パーセントを占める? 全体から見れば少数派にすぎんことは、客観的に見ればまぎれもない事実のはずだ。


一期を『面白い』と感じた者の中にも、『二期もまあこれはこれでアリ』と感じる者がいるのも現実なのだ。少なくとも私はそう感じてる。<信者>とさえ称される者達があそこまで必死になってコキ下ろす理由など、私にはまったく理解できん。


『面白くない』と感じるのは自由だ。自分が面白くないと感じたものを『面白いと思え!』と他人から押し付けられるのは私とて承服できん。


だがな、自分が面白くないと感じたものを、他人にも『面白くないと思え!』と押し付ける権利が貴様らにはあるのか? 


まったくもって『何様だ!?』という話だな。


加えて世の中には、


『金を貰ってるんだから何を言われても仕方ないだろ!』


などとたわけたことを抜かす輩がいる。


お前それ、


<金を払ってやってる客に対する態度が気に入らないと、店側に土下座を強要する輩>


と同じ思考だぞ? 


何故そのことに気付かんかな。


『読者様はお客様、視聴者様はお客様、お客様は神様』


いつまでそういう思い上がりを続けるつもりなんだか。


私は、<客の立場>としても、他人の作品を貶そうとは思わん。金を払って『損をした』『無駄になった』と思うことはあっても、それは所詮、私の感性には合わなかっただけにすぎんからな。


<ラノベ論>を高々と掲げる連中からはクソほど叩かれる私の作品でも、『面白い』とおっしゃってくださる方はいらっしゃるのだ。


その事実を前にすれば、個人的な見解にすぎん<ラノベ論>など、なにするものぞ」


いつものように熱く語るアオの前で原稿のチェックをしていたさくらは、


「はいはい。それは分かりましたから、百五十二ページの六行目から十三行目に掛けて、アニメの<クラウン・パヴァネリアス>を揶揄してるととられかねない表現になってると思うんですが、どうでしょうか?」


と、事務的に問い掛けた。するとアオも冷静になり、


「お、おう、そうか? 私は<クラウン・パヴァネリアス>はアニメも原作もよく知らんのだが、そのように受け取られるのは本意ではないな。どこがマズい?」


原稿を覗き込んだのだった。


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