第28話

 横浜スタジアムで湘南高校の部員が泣いている。それを四軍部員も応援席から忸怩たる思いで見ていた。


 決勝戦、西横浜商業高校が夏の甲子園の切符を手に入れた。


 僕達は頑張ったよ! 胸をはってよ! そんなことは口が裂けても言えない。


 僕たち三年生の野球部引退が決まった。


             *    *    *


 かんぱーい!総勢120人の打ち上げが始まった。


 毎年、湘南高校野球部は家族向け食べ放題で打ち上げをする。質より量そして時間無制限、この日のバイキングは野獣で店内が埋まる。


 テーブル席には肉を乗せた皿が埋め尽くすように並び、キャンプファイヤーのようにロースターが火を噴く。そこに投入するエンジンは焼けているかどうか怪しいにもかかわらず次から次へと消えていく。


 アニメ日本昔話に出てくるようなお茶碗にこんもり盛られたご飯が、吸い込まれるように部員達の口に消えていく。


 男性部員に混じって部活してきた僕だけど、彼らの野獣ぶりにはどん引きだよ。僕たち女子はラーメンを食べるのもレンゲに小さなラーメンを作って可愛く食べるんだぞ(一部除く)。


「誠ちゃんも食べなよ!」


 お皿にたっぷりと乗せられた生焼き肉が僕の前に並べられる。


 ここで悪気のない親切を誰が断れようか……美味しく頂きました。若いってすばらしい! 安い寿司や肉がこれほど美味しく感じたことを僕たちは数年後思い出すんだよね。


 少し飲みこみにくい肉を頬張りながら黄昏る僕でした。

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