『登場人物―光の子、フェル。テラの大樹に……ミトラやフィナ、軍国の冒険者たち。若き魔王も。霧の人形や堕落神。そして、狂信者。』


①フェル・リィリア


【時の女神の落とし物―天国の鍵(天のピース)。No.2-?:本人に自覚はないが、惑星ラスの天のピースと関係がある。その為、No.1-テラの大樹に狙われている。】


 異界の星、惑星ラス。水の都ラス・フェルトの住人。歳は15歳。母親と同じ金色の髪は……最近、母親に切ってもらい、肩に届くぐらいで整えられている。フェルは、自分の青い瞳を気にいっている。金色の髪と青い瞳は、明るい印象を与えてくれるから。ふわふわとした白いスカートと緑色の帯……水の都の民族衣装を着ている。


 因みに、彼氏はいない。今まで、自分の好きなことをするので、精一杯だった。絵を書いたり、歌をうたったり……彼氏がいないことを、父はとても喜んでいたけど。


 フェルの家族は、聖フェルフェスティ教の教えを受けている。惑星ラスは、光の女神様の加護を受けた星。人々の日常と深く結びついている。光の子。聖フェルフェスティ教では、新しい年を迎えると……子供たちの中から、光の子を一人選ぶ。今年は、フェルが選ばれた。既に、幾つかの儀式―豊穣の儀などに参加していて……死者の儀にも参加する予定だった。


 死者の儀に、フェルは参加できないかもしれない。強国グルムドの兵が、水の都ラス・フェルトを包囲しているから……。




②テラの大樹。

【時の女神の落とし物―天国の鍵(天のピース)。

砕けた、10個の欠片―No.1~No.10。現在の獲得状況。


No.1-テラの大樹、テラ・システム。

No.2-?

No.3~No.5-聖神フィリス、ヘブンズ・システム。

保持者―狂信者デュレス・ヨハン。】


 森林魔術、テラの大樹。女神の霧のシステムに属さない、未完成のもの。天のピースによって成長したけど、ただ、成長しただけだった。魂や魔力を、二つの星で循環させることもできない。テラの大樹は、未熟だから、成長という可能性はある。


 時の女神の落とし物、天のピース。この欠片が、惑星テラに落ちたのは……テラの人類が誕生するより前である。テラの大樹は、惑星テラで育って、テラの人と関りもあった。大樹は、ノルンの夢の中で成長して……ノルンと深く関りがあるものを根で覆っていた。騎士神オーファンの星の核も。


 テラの大樹は、青い瞳のノルンを、テラの神に選んだ。テラの大樹は、三つのシステムを起動する。テラ・システム―フェンリル、クロノス、ノルニル。惑星テラを守る為に……ノルンとルーンを守る為に……。




③白い人形―女神のレプリカ、傲慢の魔女ウルズ。

【ウルズ:七つの大罪の一つ、傲慢の保持者。】


 脅威度―Aランク。1番目の霧の人形、傲慢の魔女ウルズは……女神のレプリカ、ルーン・リプリケートに星の核を喰われている。女神の影アシエルがいなくなって……長女ウルズでも、白い人形を支配することができる様になった。幼いルーンの魂が、自分の体の中に戻っても……幼いルーンでは、ウルズには勝てないだろう。人形の体を取り戻すには、白い人形から、ウルズの星の核を取り出すしかない。


 

 女神のレプリカ―傲慢の魔女ウルズは、女神の影アシエルから解放されて……自分の意思で歩いたのは、数千年ぶり。


 白い霧の傲慢に手を伸ばして、女神の影に操られて、人や魔物を殺しまくった。12の堕落神が争い、星が壊れた―天上戦争時のこと。魔女ウルズが生まれる前から、人や魔物は争い、殺し合っていたけど……。どれ程月日が流れても、戦争時の感覚が強く残っている。


 悪魔の大厄災を起こし、神生紀文明を滅ぼした。魂を惑わす、紫の瞳を持つ人形に慈悲はない。


 女神の影アシエルから、解放されてからも……弱者を虐殺したことを気にすることない。詫びようとも思わなかった。彼女は、悪魔の女神の娘であり……天上戦争時に生まれた、根っからの悪魔だった。




④憤怒の魔女アメリア―女神の影アシエル。

【アメリア:七つの大罪の一つ、憤怒の保持者。女神の影アシエルに操られている。】


 脅威度―Aランク。2番目の霧の人形。赤き魔女と呼ばれていた。燃え滾る、赤き瞳を持つ人形は、霧を爆炎に変え敵を焼殺する。魔女の炎は……軍神イグニスに及ばないものの、分厚い鉄でさえ簡単に熔かしてしまう。白い霧は、異界の門を通ってあらゆる所に発生する。例えば、人間の肺や胃などの内臓の中でも……隙間があれば発生できる。小さな隙間に微量の霧を発生させる。それは呼吸する様な感覚だった。ロンバルト大陸で、悪魔の大厄災を起こしている。


 若き魔王クルドに自身の炎を授け、共に行動し始める。若き魔王クルドは、ロンバルト大陸の西方、砂塵吹き荒れる荒野の支配者。若き魔王は、わざと“魔女の名前”を呼んだことがある。因みに、いつもは“魔女”と呼んでいる。『お前に名前で呼ばれたくないから、名前で呼ぶな』と、アメリアが半殺しにした事があるらしく……その時も、魔女の爆炎が若き魔王を襲った。


 軍国フォーロンドの首都バレルで、飛空船カーディナルを撃墜した。その後、赤い眼の魔女の姿は、目撃されていない……白い霧の中に帰った様だ。




⑤暴食の魔女エレナ。

【エレナ:七つの大罪の一つ、暴食の保持者。】


 脅威度―Aランク。3番目の霧の人形。銀色の髪、白い手足は同じでも……瞳の色が違う。三番目の霧の人形、爆ぜる様な黄色の瞳を持つ、“魔女エレナ”。黒のミニズボン、黒のニーハイソックス。銀色の小手を身に着けている。


 雷を呼ぶ、雷鳴魔術。爆ぜる様な瞳を持つ、霧の人形は……白い霧から雷を生む。霧に包まれる、霧の人形は加速して……霧に覆われた街の上空で、雷鳴が轟く。悪魔の女神から、霧の武器を呼ぶスキルを授かっている。




⑥魔女ヘルと魔女ヴァル。

 四番目の霧の人形。負の感情に陥る、怪しげな橙色の瞳を持つ、“魔女ヘル”。五番目の霧の人形。安らぎを与える、緑の瞳を持つ、“魔女ヴァル”。


 魔女ヘルとヴァルは、身長は同じくらいで、姉たちと比べたら低い。性格も似ているので、双子だと言われたら、信じてしまうだろう。どっちも、めんどくさがり屋で、できれば動きたくない。母の様に、他者の心を読んだり……長女の様に、他者の心を惑わしたりして、暇をつぶしている。




⑦堕落神、騎士神オーファン

 第六惑星、人の神。第六惑星と同じ名を持つ、人の神である。異界の女神は、人や魔物に試練を与え、勝ち残った者に名と恵みを与えた。星と同じ名を与えられた者は、女神の祝福によって神となる。

 

 白い太陽を回る、12の惑星と同じ名を持つ者。異界の女神から、“幼き子らを守護する者”の称号も授かった。騎士神が人間だった頃、子供好きで、他の誰よりも子供の世話をしていた。

  

 神生紀の後期に起こった、天上戦争によって、6つの星が破壊され、残った神々も、第三惑星フィリスに封印された。騎士神は堕落した。体は瘴気に包まれ、巨大な狼の様な姿に変貌した。愛用していた、騎士の鎧も変質した……今や見る影もない。苦しみに囚われた、水晶の像は、今にも動き出し、苦しみもだえそうである。


 

 騎士神オーファンが、自害した時……テラの大樹が、騎士神の星の核を運んだ。今、騎士神の星の核は、大樹の城の中庭にあり……白い人形のノルンとルーンを見守っている。




⑧堕落神、軍神イグニス。

 脅威度―Aランク。魔物の神。霧の世界フォールの第一惑星。灼熱の星を、依り代にするもの。体長は、5~6m程。灼熱の炎を纏う、獅子の様な炎の獣。黒い鋼鉄の皮膚に、巨大な爪。黒い皮膚は、鉄の鎧となり……ごつごつしていて、野性味に溢れている。




⑨堕落神、不死なる名も無き神。

【名も無き神:霧の色欲に選ばれている。女神の影アシエルに操られない様に、手を伸ばしていない。】


 脅威度―Aランク。霧の世界フォールの第十一惑星。氷の惑星を依り代にしている。吸血鬼の娘。神生紀文明が滅び、数千年が経過して……名前は失われてしまった。


 名も無き神は、自分の名前を憶えている。だけど、誰にも教えようとしない。彼女は、自分の過去を詮索するものを容赦しない。


 招魂魔術を得意としている。30~40㎝くらいの茶色のクマのぬいぐるみをよく使って、魔術を行使していて……。表面の茶色の毛はふわふわしている。触り心地も良さそうだ。このクマは、魂を入れるだけの器だけど……。




⑩堕落神、巨神グレンデル。

 脅威度―Aランク。霧の世界フォールの第九惑星、魔物の神。巨神は、眠っている。封印から解放されることに、興味がないらしい……。


                                    


⑪堕落神、聖母フレイ。

 脅威度Aランク。霧の世界フォールの第二惑星、人の神。堕落神には、大きな過ちがある。“天上戦争”。数千年前の戦争で、神生紀文明は滅んだ。神の半数が、白い霧に喰われて、消えた。残りの神も、悪魔の女神によって……惑星フィリスに封印された。


 聖母フレイは、聖神フィリスを信用していない。聖神フィリスは、悪魔の女神のことしか見ていない。魔物の神だけでなく、人の神も、聖神の捨て駒。天上戦争は、聖神フィリスによって、引き起こされ……。悪魔の女神が現れると、聖神は抵抗するどころか、自らの身を差し出した。聖神は封印されて、霧の人形が現れて……天上戦争は、幕を閉じた。


 終焉のsevendays、始まりの時。騎士神オーファンの鉄槌は、荒野に大穴を開け……大地を揺らした。その揺れは、地下深くまで届き、聖母フレイの眠りも妨げた。眼を覚ました、聖母フレイは……墓の精霊たちを支配。“聖母の影”となって、情報を得ることから始めた。運よく、愚か者。バレルの冒険者が、墓の中を探索していた。


 冒険者から、ある噂を聞く。生きている冒険者ではなく、冒険者の死体から……。堕落神オーファンが、目覚めたとのこと。試しに……フィリス・システムを用いて、星の核に呼びかけた。


 ドク……ドク……確かに、反応が返ってきた。しかも、複数。明らかに、動いている。封印されず、保有している者は、霧の人形しかいない。星の核の欠片の可能性もあるが……。


 そして、あの時……ミトラ司教は、飛空船カーディナルから、外へ放り出されてしまった。傲慢の魔女ウルズの転移魔術。司教は、転移魔術を行使できない。数秒で、地面に叩きつけられてしまう。聖母フレイは、ミトラ司教を助けた。岩石魔術、聖母の砂が包み込んでいく。


「人間の娘よ、我が助けよう。

 ……愚かな神を信じるな。」


 聖母フレイは見守る。ミトラ司教を利用して……。時間をかけて、少しずつ魔力を送り、ミトラ司教の魂を変化させた。聖母の魔力に同化させていく。赤き魔女アメリアも、傲慢の魔女ウルズも、誰も気づいていない。とにかく、多くの人間や魔物に触れる。接する様に促した。ミトラ司教は、幼い霧の人形ルーンに、よく抱きついていたが……触れたものから、多くの情報を得られた。


 ミトラ司教は、白い霧の愛に選ばれている。信仰を手にした、聖フィリスの枢機卿、デュレス・ヨハンの様に。やがて、白い霧に操られるだろう。我は、白い霧が嫌いなので、邪魔することにした。余り効果はないかもしれないが……。




⑫ミトラ・エル・フィリア

【ミトラ:七つの元徳の一つ、愛に選ばれている。聖母フレイが邪魔をしている為、白い霧に手を伸ばしていない。】


 聖フィリス教の司教。白いローブを纏った、金色の髪の女性。歳は30代くらい。金色の長い髪を後頭部で、赤いリボンで一つにまとめて垂らしている。堕落神、聖母フレイが宿っている。


 飛空船カーディナルへの乗船は、偶然だった。病気で倒れた者がでて、欠員が生じたから。狂信者、デュレス・ヨハン枢機卿から……広大な海、女神の雫の上空で、今回の遠征のことを知らされた。霧の人形を捕まえることが、我が主の命だと。



 迷い星フィリスは、地獄に落ちてしまった。太陽の光が消え……暗闇の世界に。人々は主神に祈る。でも、聖神フィリスは姿を現さない。聖母フレイを宿す、ミトラ枢機卿は人々を導いていく。


 主神に見捨てられた人々を救う為に……ミトラ枢機卿は、白い霧の愛に手を伸ばすだろう。




⑬獣人のフィナ。フィナ・リア・エルムッド。

 元悪魔のメイド、元軍国フォーロンドの伯爵令嬢。悪魔の女神の言いつけに背いて……フィナは、ノルンを霧の城の外に出してしまった。


 悪魔の女神は寛大で、ロンバルト大陸の南にある、白い霧の大陸から追放されるだけ済んだ。軍国フォーロンドに来たのは……魔女アメリア様の考え。


 エルムッド伯爵家は……軍国の貴族の中では、上位でもなく下位でもない。弱すぎず、強すぎない。一番気づかれ難い。最初は、屋敷のメイドとして雇われた。人の魂を惑わす・操る精霊魔術を行使したり……非常に弱い、神経毒を少しずつ使ったりした。6年もかかったけど、誰も殺さずに、伯爵令嬢になった。父親の隠し子として……。精霊魔術で子供に見える様にしているから、16~18歳くらいに見える。


 伯爵令嬢―フィナ・リア・エルムッド。エルムッド伯爵は、元老院議員。屋敷には、軍国の政治家や将校がよく訪れた。エルムッド伯爵の妻は、持病が悪化して……二年程前から、商業連邦国家のエルミスト州の別荘へ。養母の手紙から、霧の海峡と白い霧の大陸を眺めて過ごしているとのこと。義理の兄と姉がいるけど……義理の兄弟姉妹は、政治に興味がないらしい。隠し子として紹介された時も……誰も文句を言わず、喜ばれたくらい。「……上手くいきすぎ……エルムッド伯爵め。」


 私は……養母の代わりに、エルムッド伯爵に付き添った。伯爵は、68歳。白髪の御爺様だが……歳の割りには体力がある。若い頃は、よく旅をしたそう。お酒には余り強くないので、酔っぱらうとよく昔の冒険の話をしてくれた。因みに、必ず孫と勘違いされるので……その対応にも慣れてきた。最後は、伯爵が冗談を言って、相手に信じ込ませているけど……。


 最近、軍国にとって……最悪なことが起きた。崇拝していた、騎士神オーファンが、天から魔剣を落とした。しかも、猛毒のガスを含んだ雲が……西から近づいてきているらしい。騎士神オーファンの鉄槌。流石に、どのパーティも全て中止。屋敷に軟禁されている。毎日、毎日……自分の部屋の窓から、外を眺めるだけ。屋敷の執事ジョンが、外の情報を教えてくれているので、まだ我慢できているけど……。「……暇、本当に暇……。」


 

 その後、フィナは、惑星テラにとばされた。堕落神、名も無き神の招魂魔術の影響を受けて……人の姿、フィナ・リア・エルムッドを捨ててしまった。


 

 獣人のフィナ。犬の耳と尻尾が生えている。以前と比べて、体が少し小さくなった。栗色の髪は変わらないけど……。フィナは、白き狼の魔力を授かり……新たな生を受けた。オーファン・システムは、存在しないけど……白き狼セントラルの魔力や記憶など、全てを受け継いでいる。テラの大樹が、白き狼を起こす為に……狼に宿した、天のピースも。



 今、獣人のフィナは、ノルンの夢の世界を訪れている。元メイドとして……できる範囲で、大樹の城の客室、図書室などを掃除したり……。大樹の城の中庭に留まっている、悪魔の女神の話相手になったり……。


 フィナは心配している。執事のジョンや軍国の冒険者たちが無事かどうか……。悪魔の女神は教えてくれないから……。




⑭三大魔王、炎鬼クルド。

 脅威度―Bランク。燃え滾る、赤い眼のオーク。千年程前のフィリス教の聖典に、ハイオーク―オークの上位種として登場する。魔王になったのは百年程前。褐色、茶髪、金の斧……いわゆる、チャラ男。三大魔王の一人。ロンバルト大陸で起こった、悪魔の大厄災で、赤き魔女に半殺しにされる。興味を失って魔女が去った事により、一命をとりとめた。


 その後、赤き魔女を追い奇襲をしかけるも失敗し、また半殺しにされた。その後何度殺されかけたか、覚えていないが……炎の耐性を得て、炎鬼となる。この頃から魔王へと覚醒し始めたのだが、本人は気づいていなかった。


 赤き魔女と契約し、共に行動し始める。ロンバルト大陸の西方、砂塵吹き荒れる荒野の支配者。因みに、赤き魔女の事を好いているのだが……魔女に伝えるつもりはない。もし、魔女を怒らしてしまえば、燃え盛る炎によって焼殺。炎の耐性があっても、彼女が本気で怒れば意味をなさない。共に行動していたことが長かったので、彼はよく理解していた。



 若き魔王クルドは悩んでいる。金色の斧、魔女ウルズの傲慢の烙印によって、壊されてしまった。魔女アメリアに会いたいが……会えば、斧が壊れたことがばれる。今日も、魔女に焼殺されずに、会える方法を考えている。




⑮ミランダ・フォーチュン

 冒険者ランク―Dランク。生まれは、ロンバルト大陸の南にある海洋国家―エルミスト州。レイピアの使い手。黒い瞳、黒髪で肩にかかるぐらい。前向きな性格で、「何とかなるよ」が口癖。歳は20代後半ぐらい。


 ロンバルト大陸の中央に位置する、軍国フォーロンド。騎士神オーファンを崇拝していて、馬に跨った騎士神の像が設置されている。軍国では、1年に1回武道大会が行われていて……武道大会で出会ったロベルト、ミルヴァと共に行動している。


 エルミストのフォーチュン家は、数十の帆船を持ち交易で名を馳せた名家。フォーチュン家の現当主にとって、悩みの種は……娘が家出したこと。



 飛空船カーディナルが、軍国の首都バレルを襲撃したこと。首都バレルが、聖神の聖域にとばされたことは、世界中に知れ渡っている。


 さらに、世界は闇に包まれてしまった。今、大海原に……聖フィリス教国を目指して、フォーチュン家の帆船が突き進む。家出した、馬鹿娘を連れて帰る為に……。



⑯ロベルト・フィルド。

 冒険者ランク―Dランク。黒い眼、眼光鋭く威圧する。黒髪で短髪。歳は36歳。慎重な性格で、考え抜いてから行動するタイプ。前のめりになりやすいミランダをよく説教していた。軍国の武道大会で出会った、ミランダ、ミルヴァと共に行動する事になる。




⑰ミルヴァ・カ―ネル

 冒険者ランク―Dランク。歳は、16~18歳くらい。魔術師で、クレストの弟子。エルミストの魔術師だけが行使できる……師匠クレストから教わった、一番得意とする魔術は、水流魔術。黒い瞳、黒髪は長く腰まである。緑の葉っぱが刺繍された薄い赤いローブを着て……よく俯いているので、顔は良く見えない。彼女の声は小さいので、耳を傾けてあげる必要がある。



⑱エルムッド伯爵家の執事ジョン。

 伯爵の盟友は……若い頃に雇われ、エルムッド伯爵が、ロンバルト大陸中を旅した時も付き従った。冒険には危険がつきもの。北の広大な森林地帯では、魔晶の木に捕まり、2日間木の上で過ごした。南の商業連邦国家―エルミスト州では……自分の有り金を全て、船のレースに賭けることになってしまった。


 数十の帆船を持ち、交易で名を馳せた―エルミストのフォーチュン家。エルムッド伯爵とその名家の娘の喧嘩に巻き込まれ……今でも、年老いた魔術師クレストに笑われている。彼の記憶では……魔術師クレストも、主人である名家の娘に、自分の有り金を全て、賭けさせられていたと思うのだが……。


 パーティを組み、ロンバルト大陸の東の海。海の魔物が殆ど生息していない、女神の祝福で、奇跡的に海の魔物に襲われたり……。荒野の山脈の麓、木こりや狩人の小さな村では、山の魔物―脅威度Dランク魔物の退治を依頼されたこともある。伯爵の執事にとって、大切な良い思い出だ。



 飛空船カーディナルの襲撃。その後、自分の娘の様に愛する、伯爵令嬢が姿を消してしまった。聖神の聖域で、彼の名前を呼ぶものがいた。白い犬の耳と尻尾が生えているが……幼い伯爵令嬢だった。

 


 今、執事のジョンは悩んでいる。冒険者がある情報を届けたから……。聖神の聖域にとばされた、首都バレルに……エルムッド伯爵が訪れることを。フィナ伯爵令嬢は亡くなったと伝えるか……獣人となって、再び姿を消したことを伝えるか……考える時間はあったが、答えはでていない。




⑲クレスト・ホフマン。

 軍国の首都バレルにある、“樽飲み酔いどれ亭”のギルドマスター。魔術師で、ミルヴァの師匠。エルムッド伯爵の盟友であり、今でも数十の帆船を持ち、交易で名を馳せた、エルミストのフォーチュン家に仕えている。主人だった女性は、既に亡くなっているけど……。


 主人の孫―ミランダが家出した時、一緒についていくことになった。荒野の山脈での功績、山の魔物の退治や……伯爵の口添えもあり、軍国の首都バレルで冒険者ギルドのマスターとなる。首都バレルには、クレストを含めて10名のギルドマスターがいるけど……。残念ながら、登録している冒険者の数は最下位だった。“樽飲み酔いどれ亭”、冒険者ギルドというより、酒場として機能し過ぎていた。



 一番得意とする魔術は、水流魔術。凍らせるのではなく、水の流れを生む。商業連邦国家、エルミスト州の魔術師たちが受け継ぐ……。エルミストの魔術師だけが、行使できること。弟子以外には、決して教えないことから、現在、上位魔術の氷晶魔術に含まれている。もし、秘匿している情報を公開し、水流魔術として確立することができれば……上位魔術は、13種類に増えるだろう。「この魔術―水流魔術だけは忘れん。エルミストの魔術師。儂の誇りだ。」



 今は、クレストは……エルミストに帰って、新しい店を開くことを計画している。世界は、暗闇に包まれてしまった。樽飲み酔いどれ亭には、多くの客がきていて……皆、やけ酒をあおっている。




⑳狂信者、デュレス・ヨハン

【デュレス:七つの元徳の一つ、信仰の保持者。】


 惑星フィリスでは、初老の男だった。白髪が混じった黒髪、短く綺麗に整えられていて……眼は茶色で、蔑んだ眼。深紅の礼服を身にまとっていた。



 異界にある、惑星ラス。彼は……転生しても、魂は変わらなかった。実際に、自分の姿のままで、若返っている。歳は、25~30歳くらい。惑星フィリスにいた時の様に、年老いていなかった。眼は茶色で、蔑んだ眼。黒髪は短く綺麗に整えられていて……深紅の礼服を纏った、青年は笑みを浮かべている。


 聖フィリス教の元枢機卿であり、聖神フィリスの忠実な僕。聖神フィリスの時の魔術によって……彼は、転生した。青い瞳のノルンが生きていない、終焉の時の中で……。


 聖神フィリスに、ノルンの星の核を献上し、自分の魂も奉げた。再生と終焉の時が混ざりあい……再び、生を受けることになった。《……役目を果たしたと思ったのですが……。》


 彼の両腕には、神聖文字が刻まれている。一つは……聖神フィリスの神聖文字。もう一つは……最初の霧の人形の神聖文字。水の都ラス・フェルト、魔女の文字が反応している。



 狂信者デュレス・ヨハンは、主の命に従い……人や魔物の魂を天国に運ぶだろう。多くの魂が、ヘブンズ・システムに喰われると分かった上で……。聖神フィリスが望めば、魂でさえ奉げてしまう。新たな生を受けても、本質は何も変わっていない。彼の魂は歪み、壊れている。生まれ変わっても、治らない程に……。


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