第19話 星の場所
妹がいるなんて、聞いていなかった。
いたのだったらなぜ
「
「あの手紙は半分俺が書いた、上半分の方をな。だけれど
「上半分の手紙も
「歴史の鬼に何を求める、真似ることなんざ赤ん坊にでもできるさ。」下駄を脱ぐ
「
「…
「人間と鬼の間に子を作ってしまったからでしょうか。」
「確かにな、だけれど実際その法を除外する方法というものがある。」父上はひどく疲れた顔をしていた。疲れたというよりも、悲しんでいる表情の近い。
私が「それは?」と聞く寸前、
「人の魂を食って鬼人にすることによって、人と鬼の関係は法には触れることはなく可能となる。相手の人を
そのほか鬼の能力に目覚める元人間も、超人の身体能力を得る
「
「さぁ、それはわからん。」父が答えた。
「
「俺の方で助けられた時はまだ正常だったさ。」ため息を吐く歴兄。
「
「知ってるけど、君の
「なぜですか?なぜ教えてくれないのです?私の知らない妹が絡んでいるのですか?」
「関係というよりも、存在してすぐ消えたことで
「建前の中の本音は何なのですか。」
「僕は何度も『なんで』と聞かれるのが嫌いなんだ、この場でそれを一番理解しているのは君だと思っていたのだけれど。君の舌を抜いてやろうか?ん?」
顔の筋肉と皮は笑顔を被っているが、目には怒りが見えた、まだ私が幼い小鬼の頃見た苛立ちの眼差しだった。
「はい」
そういった後、びっくりするほどにすぐ
「もう一度言うけれど、僕が彼の過ちを口に出すことはこれからはない。人間を鬼に変わらせることで一緒に愛だの恋愛だの家族になるだの子作りだのできるから別に構わない。鬼の法にもふれることはない、むしろ新しい鬼を作り出すことになるから大歓迎なのかもしれない。だけれど覚えておけ、人間という判断をする生き物を鬼という委ねの生き物に変えることは異界が許しても天界は絶対に許さないからな。」
「天界は絶対に、人間と鬼の一線を許さない。だから僕はずっと人界と異界の間で道歩く。結局僕は神獣様に拾われたヒトの孤児、嫌われているんだよ。」と、
久しぶりに入る家中は、小さく見えた。家を出て人界へ行った時は小鬼だったから家を大きく感じたのだろう。家に帰ってきたんだという安心感だけが心を包む。長い一瞬の中で、私はいろんなものを見てきた。嫌なものばかり見ている時だけ時間が長く感じると何処かで聞いたが、人界での生活は鬼にとってそんなに苦しいものだったのだろうか。
異界の食べ物は鬼の腹の足しになる。
人界では異界の食べ物がないから、人間を食べる羽目になる。
人間は結構まずい。
食感は別に美味なのだ、まずいのは食べている時なんども見なければならない「死んだ顔」だ。
あれは悪夢を墓から蘇させる。
大きいというよりも広いと言った方が正しい我が家は、二手に分かれて構成されている。家臣が日々義務をこなし義務を作る本丸と、家臣が一人もいない本家。本家に行き着くためには守りが強く固められている本丸を通らなければならない、そのためどこからも視線を感じる羽目になる。
「まて、あれは
「さっき戻られたばかりだそうだが…確か人界の方で暮らしになられた。」
「人界の方でか?何か戻る理由とかがあり、帰ってきたのだろうか。」
「
「でも場所という違いも時代の違いもあるだろう。それはありえなくないか?」
「確か、新しい妹様も人界で亡くなられた。」
「人間め、
目を閉じる、耳も閉じたい、見たくも聞きたくもない。
それしか感じられない。
「…」
文をいただいて、読まさせていただきました。この度戻ってきたのは自分の身の危険を感じたからではなく、
「大丈夫だって、文にはかいてあったろう」
知っています。
「じゃぁなんで戻ってきた?」
心配だからです。
「妹のことは聞いた?」
聞きました、消えたと。
「あの子は生きてるよ。」
星が流れたと
「生きてる。
「やめてくれ」
静寂、その後なんども
「自分もあまり
「あの子は自分の感情を自分で制御できる子だ、今まで僕があの子とともにくくってきた修羅場のあの子の反応を見た僕だからこそ言える。なんとかなるというなら、なんとかなるのだろう。大丈夫じゃないなら、大丈夫とは言わない。」茶を煎れる主様は手のひらを合わせ、白と黒の混じった彼の前髪がつぶった目を微かに隠した。
「おかえりなさいませ、
昔一回だけ聞いたことがある声だ、艶のある嗄れ声。
「
私は
角は
「名前まで覚えられているとは、一回しかお会いしていないのに素晴らしい記憶力。ますます母君に似てまいりましたね。」男は、自分を
「お久しぶりです。」私はびっくりしたばかりか頭を下げ、
「罪を犯した鬼の前に頭を下げてはダメですよ、
「そうなんですか?」
「そうですよ。」
その
会話はなんとなく軽かった。多分、先ほどの思い空気を
私は軽い会話よりも、自分が不思議に思う答えを求めた。それでも、茶の間からは一切真剣な話は流れなかった。
白狐が夜空の中で宴会を開き流れ踊る時に私は本家の建物の外でそれを見つめていた。静かに口ずさむ、
私はあなた、あなたは私。
これ以上の矛盾はないに等しい。
あの時はこの言葉に考え溺れ、
この時はその言葉に振り回される。
『 物語とは、道のようで、時間をかけて、情報を得て、余計な雑音をかけて、賭けに誘惑され、苦しみもがき、新たな発見を繰り返し見つけて、なんども繰り返すものだ。 』
世界が生まれた時、空は真っ白だった。それを信じるか?
その賭けに乗るか否かは人間次第。
人間次第、鬼は死んだ。死んでゆく、星は鬼の命の証明とも言える、流れてゆく、天に昇り手を伸ばしていく。
「空の何を見てるんだい?」
何を探しているのだろう、
自分の命の証明?
父上の命の証明?
いや、違う。
「母上と椿の星がいた場所を。」
「意味なんかあるのかね」
「ありますね、興味がある。」
「そうか、じゃぁ僕も探そう。」
「誰の星の場所でしょうか?」
「僕の星の場所かな?」
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