肝臓Ⅱ

D.肝臓の循環障害

1.門脈系の循環障害

【A.肝外門脈の閉塞性疾患】

 ・原発性肝癌あるいはその他の腫瘍による腫瘍塞栓や血栓により門脈圧亢進をき  たす。


【B.肝内門脈の閉塞性病変】

 ・住血吸虫症:

 ・日本住血吸虫症或いは南米にみられるマンソン住血吸虫症。

 ・虫卵が肝内門脈枝に塞栓し、高度の門脈炎、門脈周囲炎、門脈圧亢進を起こ   す。

 ・陳旧化すると肝線維症(日本住血吸虫性肝硬変)となる。


  *日本住血吸虫の中間宿主はミヤイリガイ。


【門脈圧亢進症の合併症】

 ・食道静脈瘤

 ・腹水

 ・門脈-下大静脈シャント(肝性脳症)

 ・腹壁静脈怒張(メデューサの頭)


2.肝静脈系の循環障害

【A.うっ血】

 ・肝静脈或いは下大静脈の血流うっ滞によっても肝のうっ血が生じるが、右心不  全によるのが最も多い。


 ・急性うっ血:

 ・小葉中心部にうっ血が目立ち、経過が長引くと萎縮した肝細胞に脂肪化がみら  れ、ついには壊死に至る。


 ・慢性うっ血:

 ・小葉中心部のうっ血部が互いに連続し、肉眼的に「ニクズク」の割面のように  みえる → ニクズク肝

 ・更に持続すると、線維化が起こり、高度になるとうっ血性肝硬変となる。



E.ウイルス性肝炎

 ・ウイルスによる肝細胞の変性壊死、及びそれに続く二次的反応としての炎症細  胞浸潤。

 ・炎症細胞は肝小葉より門脈域(グリソン鞘)に主にみられる。

 ・現在明らかになっている肝炎ウイルスは、A, B, C, D, E型の5種。


1.肝炎ウイルスによる肝炎

【A.A型肝炎type A hepatitis】

【概念・成因】

 ・A型肝炎ウイルスhepatitis A virus(HAV)。

 ・RNAウイルス(ピコルナウイルスの一種)。

 ・経口感染による急性肝炎。


【臨床との関連】

 ・慢性化することなく治癒するが、稀に劇症肝炎となる。


劇症肝炎

広汎な肝細胞壊死のため急速に肝機能障害が機能障害が進行し、数日~10日前後で肝不全のため死亡する。予後不良な肝炎。


【B.B型肝炎type B hepatitis】

【概念・成因】

 ・B型肝炎ウイルスhepatitis B virus (HBV) 。

 ・DNAウイルス(ヘパドナウイルスの一種)。

 ・血液、精液、唾液等の体液を介して感染。

 ・輸血による感染は殆どみられなくなった。


 ・ウイルス抗原:

 ・表面抗原hepatitis B surface antigen;HBs抗原

 ・コア抗原hepatitis B core antigen;HBc抗原

 ・コアe抗原hepatitis B e antigen;HBe抗原*envelope


 ・HBe抗原は可溶性蛋白質で、血中にも出現する。

 ・HBe抗原陽性時は感染力が強い。

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