039 幼馴染と言うのはそれ以上、それ以下でもないⅣ
いきなり、奥の方から声が聞こえた。振り返ると藤原先生が用紙を二枚持って来て二人にそれぞれ一枚ずつ渡した。
「俺にとっては君たちにも入ってほしいと思っている。ただでとは言わない。その代わりにこの研究室を自由に使ってもいい権利を与えるこれでどうか?」
「お、おい……。それはやめておいた方がいいと思うんですが……」
「自由に使ってもいいなら使わせていただきます」
春が目を輝かせながら嬉しそうに言うと、俺と善政は段々不安になってきた。
おいおい、まじかよ……。こいつ、嬉しそうに答えたぞ。善政は、……あ。もう、これはだめなパターンだ。目が死んでいる。
「良かった。モル……研究生が増えると俺の研究が広まるよ。それにプロ棋士もいるし今度、ネットのトーナメント戦の
今、モルモットと言いかけていませんでしたか?冬月がすっげー睨みつけていますよ。ほら、他の女子も困惑した表情をしていますよ。大丈夫ですか。
好きにしろよ。もう……。
次の日、春と俺だけしか研究室にいなかった。
「ここって、何もないよね」
「ああ」
「何が足りないと思う。お金じゃないし、テレビはあるし、パソコンもそろっているのよ」
「絶対、ここには何か必要なのね」
「そうか? 俺は十分にそろっていると思うし、大体、ここは先生の私物でいっぱいだから勝手に使っても怒られないだろ仕事の資料以外は……」
「そう言うことじゃないのよ。あんたは昔から頭が固いんだからその
「それは関係ないだろ」
「何か、いいアイディアないかしら」
「俺の事は無視かよ……」
「そうよ、ここにはゲーム機が足りなかったのよ」
研究室に新たな二人が加わって以来、先生の私物以外に物がどんどん増え始めた。
春は思い出して俺に向かって口元で笑みを浮かべた。
「何言っているんだよ。お前の家にもたくさん置いてあっただろ。そこまで必要か?」
俺は読みかけの小説から一旦視線を春の方に向けて言った。
「何言っているの。私、まだ最新の
時代遅れでもいいんじゃねーの。
近くでその話を聞いていた冬月は溜息をついて、夏目はテニス部で不在、善政は本格的な国産本脚付き将棋盤を目の前に
「しかし、この大学にはゲーム部があるの。奴らそのゲーム機を三つも所有しているのよ。悔しくないの?」
悔しそうに地団駄を踏みながら春は言った。
「いや、別に……。どうでもいいだろ。次の入荷まで待てよ。もしくはネットで買え」
「嫌よ。奴らに一つ譲ってもらうのよ」
立ち上がって、善政の
「時に信司よ。俺は何で巻き込まれているのだろうか?」
「知らん」
そう言って、俺は持っていた小説を歩きながら読んだ。
「ゲームオタクには
いきなり春が話し始めて自分のゲーム論を目的地に着くまで永遠と聞かされた。
「……というわけなのよ」
「話、終わったか?」
「ちょっと、聞いていなかったの?」
聞いてたも何も全く一つも理解不能だ。隣で
ああ、これは不味いな。
眉をひそめながら足元の方は貧乏ゆすりをしている。
「それじゃあ、ミッションスタート!」
そんなわけで、春が声をあげると俺たち二人はやる気のない返事で返し、ゲーム部の部室にアポもなく突撃訪問をした。
部室には大きな液晶テレビに男女五人が最新版PF4を使ってドラモンⅪをプレイしていた。改めて、部室の中を一通り見るとゲーム機本体とゲームソフトが山のように散らばっていた。
「誰だね? 君たちは……」
コントローラーを持った少年が尋ねた。
「ふっふっふ。あなた達が最新ゲーム機を三つも
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