ハロウィーンの夜で会おうね。

@mizuhao

第1話 今年もやってきた

この街にも夜が来た。


僕たちの夜だ。


 


数々の仮装を施した子供たちはわらわらと通りに姿を現す。


「なんだトム、今年は兄貴のお下がりか」


いい気分で歩いていたのに後ろから迫力よくやってきたのは同じクラスのニア。


「私の方が沢山お菓子もらえるな、ペア一緒に組んでもいいよ?」


自慢げそうに笑うニアは今年も母親の手の込んだ段々のフリル付きワンピースにレースが器用に入れこまれたヘッドドレス付きだ。


キラリと光るビーズアクセサリーもより手が込んである。


「ありがとう、でもレナが今日も待ってるんでしょ?僕より早く行ってあげやきゃ」


「まぁ、トムが断るのは同じパターンだからな。言ってみただけさ、レナはあの角で待ち合わせなんだ、」


そう言うとニアは不気味な笑顔を浮かべレナの元へと走っていく。可愛い物が大好きなレナにべた褒めされる為、この日を首を長くしているのは彼女なのかもしれない。


 


この街のハロウィンでは2人組で街を練り歩く。学校から決められた謎のルールだ。


2人組が大の苦手な僕からしたら超えなければいけないイベントでもある。


でも、クラス別でペアを組むため僕のクラスは奇跡的に奇数。


余るのは目に見えてるし自分から1人で行動してるんだ。先生の前では3人組だけどね、何年もしてるから3人ペアも何も言わず僕1人行動。時々寂しいのはちょっと内緒だけど。


通りから抜ける風が少し嫌な音を立てて僕の背中を押す。黒猫が目の前を横切るのも何かが起きる予兆かもしれない。


 


びのび1人で歩くのはとても気持ちいい、何てったて今日は僕吸血鬼。この格好がずっとしたくてママにお願いしてたけど兄貴が先に選んだからダメだって...。


でも今年はやっと出来た


ヒラヒラとマントをなびかせて前に出る足も少しリズムを刻んでいる。


ママの大好きな少し古めの曲とともに鼻歌を歌ってしまい。誰かに聞かれてないかちょっと恥ずかしくなった。


 


通りに出れば商店街、そろそろ着く頃だろう。

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