第一話 横腹パンチと始まり

 「また私は君に恋をする。」

 「また僕は君に恋をする。」

 大きくなってあったとき二人が結ばれる事を願って。

   


四月



 俺の名前は屋文浩。

 今年から高校に通うどこにでもいる普通の高校生だ。

 家も母、父そして姉を含めた四人のごく普

通の家族である。

  

 「浩!早くしないと遅刻するわよ!」


 やべっ、呑気に自己紹介をしている場合じゃなかった、急がないと!


 「行ってきまーす」

 勢いよくドアを開ける。


 周りに他の高校生の姿は見えない。

 このままだとやばいな、走るか。


 家を出たのは八時二十一分、八時三十分までに学校に着かなければ生徒指導の先生のお説教待ったなしだ。

 それだけはなんとしてでも回避しなければ!

 家から学校までは歩いて十分ほど走れば五分程で着くはずだ。

 五分程で着くとすれば学校に着くのは二十六分ということだ。

 「いける!」

 良かったどうやら遅刻する事はなくて済みそうだ。


 このときは、このまま何事もなく学校に間に合うと思っていた。


「ハア、やばい、やばい!遅刻する!」


 高校に向かう道の曲がり角を浩が通るタイミングにそこから同じタイミングで一人の女の子が飛び出してきた。

 

 「やばい!」


 そう思った瞬間女の子の振っていた右腕が浩の左脇腹に会心の一撃を入れる。


「ぐふっ」

 走っているスピードも加わっている為、余計に痛い。

 俺はその場に膝をつく。


「どうしよう!やばい遅刻する!ごめんなさい急いでるから!ホントにごめんね!」

 それだけ言い残し浩の左脇腹に会心の一撃を入れた女の子は高校の方向に走って向かって行った。


 なんなんだよあいつ、見たことないけどうちの学校の生徒か?

 しかし、痛いな。痛いところに綺麗に一発入ってるよこれ。


 てかやべっ、急がないと学校に遅刻する!

 走ろうとするが左脇腹に入ったパンチの痛みで思うように走れない。

 「最悪だ。」







 「おい、もう八時三十分は過ぎてるぞ」

 生徒指導の木村だ。

 

 「なぜ遅刻したのか生徒指導室で聞かせてもらおうか。」

 クソッ、遅刻するはずなかったのに最悪だ。

 





ガラガラ


「失礼しました。」

 ふぅっ。

 怒られると思ったが理由を説明したあと左脇腹の赤くなっているところを見せて怪我をしていたというと許してもらうことができた。木村、中々良い先生だな。木村への好感度が少しUPした。


 ガラガラ


 「おっ、来たか浩!遅かったけど何かあったのか?」

 「屋文君が遅れるなんて珍しいね。」

 同じクラスの徳と鷹崎、徳とは小学校から鷹崎とは中学校からの付き合いでそれは今も続いている。


 俺が遅れた理由を説明するか。






「はあ?曲がり角から出てきた女の子に左脇腹にパンチを決められただと?」

 徳は少し疑っている様子で俺に聞いてきた。


「本当だからな?」


「いや、浩お前が殴られた事よりも俺は、一つ重要な事が聞きたい、聞いても良いか?」


 徳は真剣な顔で俺を見ながら問いかける。

 何を聞くつもりなんだ?殴られた事よりも重要な事とは一体なんだ。


「その子は美少女だったか?」

 徳は期待に目を輝かせていた。


「お前が聞きたかったのはそんな事だったのか?」


 徳は険しい顔で言った。


「そんな事だとっ!?重要なことだぞ!もしそれが美少女なのであればそれはご褒美だ!Mという道への第一歩となるかも知れないんだぞ!?それを気にしないのはおかしいぞ浩!」


 いやっ、それお前の場合だけだろ。

 何もおかしくないだろ。

 殴られた相手の顔なんかしっかり覚えてねえよ。

 説明しても無駄だ、この馬鹿は置いておこう。



「それにしても、それは災難だね屋文君」

 鷹崎は真面目に聞いてくれてたのか。


「そういえば、今日転校生がくるらしいんだ、私もしっかりは聞いてないけど女の子らしいよ。」


 まだ学校始まって少ししか経ってないのに転校生とは珍しいな。

 どんな奴がくるんだろ気になるな。

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