Twitter300字SS集

伊古野わらび

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あいあいがさ、いまむかし。

Twitter300字SS第33回お題「かさ」より(300字、改行含まず)


「相合傘なんてできるか。かっこ悪い」と彼は言った。

 中学生の頃だったか。

 夕方から急に降り出した雨に困っていた彼を見かねて誘ったけれど、幼なじみの彼はそう言い残し雨の中を走っていってしまった。

 翌日風邪で欠席したみたいだけど。


 そして今日も、夕方になって雨が降り出した。

 玄関を見ると、彼愛用の傘が残ったまま。

 やっぱりとため息をつき、傘を届けに駅へと向かう。


 改札を出てきた彼は、わたしを見つけると、何故かわたしの傘を取り上げ自分の傘だけ広げた。

 無言で入れと急かされる。


「相合傘はかっこ悪いんじゃなかったの?」


 隣を見上げると、あの時より大人びた声で「俺より背の高かった女の傘に入れるか。かっこ悪い」と彼は言った。


【了】

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