第47話 番外編

「ゆー君、今日はバイトないんでしょ? 私と映画行かない? 」

「えー!私とカラオケしよ」

「私達とスポッチャだよ。」


 譲の回りには、女の子達が群がり、袖を引っ張り会う。自分の一番可愛く見えるポーズでアピールしてくる子、真冬だというのに、シャツのボタンを大きく開け、胸の谷間を強調している子、真っ赤な唇を尖らしている子……、自分が自分がという猛アピールに、正直譲はうんざりしていた。


「困ったな。ごめんね、今日は母親から買い物頼まれてて……」


 女子の前では、優しくシャイな男の子のポーズは崩さない。

 どんなに心の中で悪態をついていてもだ。


「買い物くらい付き合うし」

「うちらも! 」


 胸の谷間ちゃんが、譲の腕をとり、わざと胸を押し付けてくる。

 譲は、真っ赤になり、手を引っ込める( ふりをする )。


「私達のゆー君に、下品な真似は止めてよ! 」

「あら、ひがみかしら? 」

「なによ! 」


 勝手に喧嘩を始めた女子から、そろりそろりと後退し、ある程度距離があいたところで、じゃあ!と手を振って逃げ出した。


「ゆーくーん! 」


 女子達は追いかけてきたが、譲は猛ダッシュで逃げ切った。


多英たえさん、お待たせしました」


 譲が新宿の駅前で待ち合わせをしていたのは、バイト先でナンパしてきた女子大生だ。

 母親から買い物など頼まれているわけではなく、ただたんにデートの約束があっただけだった。

 会うのはこれで三回目。

 黒髪が綺麗な、ナイスボディのお姉さんだ。

「走ってきたの? 」

「多英さんに早く会いたかったから」

「あは、可愛いこと言ってくれるじゃない。いこか? 」

「うん」


 多英は、譲の腕をとって歩き出す。

 行くのは多英のアパート。

 まあ、やることは一つだ。

 声をかけてくる女子の中で、多英を選んだのは、そのナイスボディも理由の一つだが、何より彼氏持ちだったから。

 あと腐れなく関係が持て、うるさいことを言われない相手だと踏んだわけだ。


 アパートにつくと、多英は部屋に入ると同時に譲にキスしてくる。


「多英さん、口紅!口紅だらけになっちゃう」

「ウフ、身体中につけてあげる」


 多英は、譲をベッドに押し倒すと、洋服を脱がして身体中に跡をつける。


「ずるい! 僕もつけちゃおうかな」


 譲は、多英のワイシャツのボタンを外すと、フロントホックのブラジャーを外す。

 相変わらず、いいおっぱいをしている。ちょっと色が濃いが、乳輪が大きくてイヤらしい。

 譲が少し刺激しただけで、多英はすぐに声をあげ、腰をこすりつけてきた。スカートの中に手を入れると、真冬だというに生足だった。


「多英さん、イヤらしいよね。すぐ濡れちゃうし」


 だいたい譲が女の子達と関係を持つときは、相手主体から始まっていき、押し倒されて……という流れが多かった。まあ、事が始まればいつの間にか形勢逆転するのだが。


「キスマーク……つけちゃおうかな? 」


 多英の太腿に舌を這わせつつ、譲は多英の反応を楽しむ。

 いつもなら、彼氏にばれるからキスマークはNGのはずなんだが、多英は拒否ることなく、譲の頭を抱えるように足をからませてきた。


「多英さん? いいの? つけちゃうよ」


 足の付け根辺りを強く吸うと、多英は腰を持ち上げて反応する。

 かなり際どい内腿にキスマークがついた。


「つけちゃったよ? 」

「もっと……、もっとつけて」


 多英はたえられないように腰を振る。


 これは……別れたな。


 いつもなら、もう少し攻め合い前戯を楽しむのだが、譲は多英の洋服を脱がせることもなく、とにかく事だけを済ませた。そして、さっさと自分の洋服を着る。


「譲君? 」


 いつもと違うそっけない譲の態度に、多英は戸惑いながら身体を起こした。


「次は、僕から連絡するね。しばらくバイトが忙しいからさ。じゃあ、用事があるから帰るよ」

「ちょっと、待って! 」


 譲は無視して部屋を出る。


 ハンカチで顔を拭き、そのハンカチはコンビニのゴミ箱に捨てた。

 コンビニでコーヒーを買い、イートインで飲む。

 スマホを出して、多英のアドレスを消去した。


「( 身体の )相性は良かったんだけどな」


 さて、これからどうしよう?とスマホのアドレスをチェックする。

 気軽に遊べる女友達は、かなりな人数登録してあるが、今はエッチできる女友達と会いたい気分ではなかった。

 身体中に口紅がついているのだから、会いたくても会えない……ということもあるが。


 一人の女の子のアドレスに目が止まる。


 愛実ちゃん……か。


 自分に全く興味を抱かない、珍しい女の子だ。

 彼氏持ち狙いの譲にとって、彼氏の有無はあまり問題じゃない。というか、彼氏がいたほうが好ましい。

 愛実にも彼氏がいた。

 しかも、バイト先で譲より人気がある俊の彼女だった。

 愛実が自分になびけば、俊よりも自分が上だという証明になる。そう思って、アプローチしてみたが、面と向かってゴメン! と謝られた。

 イケメンが苦手なんだと言っていたが、そう言う愛実の彼氏は正統派イケメン。意味がわからなかった。

 最初は俊に対する対抗意識からだったけど、今は愛実自身に興味が湧いてきていた。たぶん、今一番気になる女の子と言っていいかもしれない。


「今日はバイトかな?」


 譲はバイトのシフト表をチェックした。

 今日のシフトは、俊と愛実、静香、新川だった。


「行ってみるかな」


 コーヒーを飲み干して、バイト先に足を向けることにした。

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イケメンなんて大嫌い! 由友ひろ @hta228

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