特急列車猫街行き

海辺みなみ

第1話 ほろ酔い男と緑の列車

僕は飲み会が嫌いだ。いつも嫌々出席して、さらに嫌いになるっていう悪循環。今日も先輩の押しに負けて二次会まで行った。結構飲んで気持ち悪いしボーっと眠気が襲ってくる。でも終電には間に合いたいので力を振り絞って駅まで歩いて、今ホームのベンチに座って電車を待ってるところ。

なんてったって明日から大学は夏休みだ。夏休み初日の朝に街で目が覚めるのなんて僕は嫌だし、家の布団でゆっくり二度寝したい。絶対帰るぞ。

ようやく電車の到着を告げるメロディーが鳴り始めて安堵する。だが、なんだか違和感がする。なんだろう。

そうだ、メロディーか。この駅のメロディーって「犬のおまわりさん」だったか?なんか違ってたような...。

まあいい。いつかから変えたんだろう。細かいことは気にせず早く帰ろう。

僕は深い緑色をした電車にそそくさと乗りこんでふかふかの席に腰を下ろした。車内には僕以外誰も乗ってないから貸切状態。クーラーが効いてて涼しいし快適だ。

その時アナウンスが鳴り始めた。

「本日もご乗車ありがとうございます。この列車は特急222号猫街行きです。全席自由席でご利用いただけます。」

やばい。電車を間違えた。今特急って言ったよな?しかも猫街ってなんだ?早く降りなくては!

立ち上がったその瞬間。

「それでは出発致します。閉まるドアにご注意下さい。」

プシューッと音を立ててドアは閉まり、電車が動き始めた。しかもすごい速さで。普通の電車ってこんなにスタートの速度速いっけ...。

そんな事を考えながらふと窓を見ると、呆気に取られて口をあんぐり開けた間抜けな顔の僕が映っていた。


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