78話「相澤家1日目」

 それから駅に行き電車に乗り1時間かけて地元に帰ってきた。帰省する人が多いからか年明けの電車はすごい混んでた。


「着いたー!ここが玲央君の地元ねー」


「さて、ここからまだ歩くから頑張ってね、30分くらい」


「結構歩くね」


「行こうか」


 自分の家に向かって歩きだし駅のロータリーを過ぎようとしたら『おーい、玲央!こっちだー!』声が聞こえた。


「ん?父さん?」


 僕達を呼ぶのは父さんだった。わざわざ迎えに来てくれたようだ。


「愛花行こっか、父さんが迎えに来てる」


「え!?」


 僕が愛花の荷物を持ち父さんの方に歩き出すと愛花もついてくる。でもいつもより動きがぎこち無いような気がする。緊張してるのかな?


「よお、玲央おかえり。それとあけましておめでとう。そちらの女の子が玲央に出来た彼女か、随分可愛らしい子だな。初めまして玲央の父おさむです」


「は、初めまして麻那辺愛花といいます。今日からよ、よろしくお願いします!」


 こんなにテンパってる愛花を見るのは初めてかも。そんな愛花と一緒に車に乗り家まで行く。愛花はまだ緊張しているのか真っ直ぐ前を見て固まってる。

 それから10分くらいして家に着いた。


 「ここが玲央君の実家」


 住宅街に並ぶ一軒家、庭もありで子供の頃はよく遊んでた。今は母さんが家庭菜園をするためにプランターを並べてあるので今は手狭だ。


 「じゃあ行こうか」


 「うん」


 家の前にあるフェンスゲートから敷地内に入り、玄関を開け、実家に帰ってきた。


 「ただいま」


 「おかえり、それとあけましておめでとう」


 リビングから姉さんがやって来て出迎えてくれた。


 「あけましておめでとう」


 「お邪魔します椿さん」


 「遠慮しないであがって、母さんも待ってるよ」


 愛花の腕をとりリビングまで連行して行った姉さんの後を追い僕もリビングに行く。中に入ればガチガチな愛花と笑顔な母さんと姉が向かいに座って話しているところだった。なんという圧迫面接。流石に愛花に悪いので隣に座り一緒に会話に参加する。


 「あら玲央おかえり」


 「ただいま母さん、あけましておめでとうございます」


 「おめでとう、2重の意味でおめでとうかしら?まさか玲央に彼女が出来るなんてねー、しかもこんなに可愛い、どうやったのよ」


 「まぁ、その辺は彼女に聞いて、僕は何も言えないよ」


 「じゃあ母さん達は愛花ちゃんにお話聞こうかしら、玲央は部屋にいてもいいし、父さんとどこか行っててもいいわよ」


 邪魔扱いされたよ。まぁいいか。部屋に居よう。



 〜愛花side〜


 玲央君が行ってしまう。玲央君がリビングから出ようとしている背中に向けて手を伸ばすがそのままリビングから出ていってしまった。


 「玲央ったら愛されてるわね」


 「だね、2人が付き合ってからは初めてだからこんなイチャイチャしてるとは思わなかったよ」


 「ねぇ、愛花ちゃん、玲央のどこに引かれたのかしら?あの子人付き合い苦手だし、明るくないし、気になっちゃってね」


 「え、いや、あの⋯⋯」


 「愛花ちゃんお願い、玲央のこと教えて」


 椿さんまで参加してきた。私は覚悟を決めて、好きになった理由を述べた。


 「そうだったのね、あの子ったらそんなことしてたの」


 「それで高校生デビュー決めたらあんなに人気者になっちゃったんだ」


 「そうなんです、それで1年間話せずじまいで今年やっと隣の席になる機会もあって話すことが出来たんです」


 「よかったわね、好きになった人と一緒になれて、私からはこれからも玲央のことをよろしくお願いしたいくらいよ」


 お母さんは私たちのことを応援してくれた。これからもそばにいて欲しいと、私も認めてもらえたみたいで嬉しく思った。


 「私はそのつもりです、お義母さん」


 「ふふ、もう1人子供が出来たみたいだわ」


 お母さんがすごい慈愛に満ちた目で見てくる。


 「母さん⋯⋯まぁ、私も愛花ちゃんを応援してるわ」


 「ありがとうございます」


 「俺からも玲央のことよろしくお願いします」


 「あら父さんいたの?」


 お義父さんからもお願いされたけどお義母さんからの一撃により膝をついてしまった。

 その後玲央君も混ざり談笑してその日は終わった。

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