41話「迷子の麻那辺さん」
「やっと着いた」
「だな」
僕達は京の都に着いた。これから2泊3日の楽しい修学旅行だ。今年は仲のいい女子と回れるので去年みたいな気まずいことにはならないだろうし楽しみだ。
初日はクラスで回ることになっている。最初は金の寺に行く予定だ。そこで見て回ったあと昼食を取り清水寺だ。
移動は結局バスで2日目の班行動から別々に別れることになっている。
バスの中ではクラスのイケイケグループがしりとりで盛り上がっていた。中には長嶺さんや麻那辺さんも混ざってゲームに参加していた。僕には接点がなかったから参加しなかった。というより席が遠すぎて参加の余地がなかった。
なので大樹と他愛もない話をして目的地に着くまで時間を潰した。
「ここが金の寺ね」
「大樹は初めてだっけ?」
「金の寺に来るの初めてだ」
大樹と話していると後ろから声掛けられた。
「相澤は来たことあるんか?」
「あるよ、京の都はこれで2度目」
話しかけてきたのは長嶺さんだった。近くには麻那辺さんもいた。今度は顔を合わせてくれた。
「麻那辺さん、やっと顔合わせてくれたね」
「あう、ごめんね」
「麻那辺さんな、楽しみすぎて眠れなくてクマってたんやでウケるやろ」
「ちょっ!なんでそれ言っちゃうの~」
「そうだったんだね、小学生みたいだね」
「うわぁぁぁ!!相澤君に馬鹿にされた~」
「あーあ、どっか行っちゃった」
麻那辺さんは僕が馬鹿にしたせいで・・・自分ではしたつもりはなかったんだけど、そのせいで1人で先に行っちゃった。
「玲央が悪いと思うぞ今のは」
「探しに行かんとまずいんちゃうか?」
「わかってる、ちょっと探してくるよ」
「先生には上手くいっといく〜」
こうして僕は麻那辺さんを探すため境内を探し回る。
一方麻那辺さんはそのまま逃げてきて、ようやく頭が冷めて反省している真っ最中だ。流石に小学生見たいと言われただけで逃げる方がどうかしている。みんなに迷惑かけてるだろうし戻ろうと思っていた所で自分が今どこにいるかわからなかった。
「あれ?もしかして私迷子?」
麻那辺さんは自分では気づいていないが結構方向音痴だったりする。慣れた道は大丈夫なんだが、初めて来た場所なら地図を見ても迷うくらいだ。
「とりあえず、今来た道を戻ればいいはずだよね」
麻那辺さんは気づいていない、今来た道と言って自分の背の方向に歩いていくが、麻那辺さんはその前にその場でくるくる回ってるから今から向かうところはさらに先で戻るどころか進んでいるのだ。
「あれ?見たことない景色だよ?」
見たことない景色・・・そりゃ当然ここは地元では無い、初めて来た場所に見たことある景色なんて存在はしない。迷子の迷子の麻那辺さんクラスのみんなと会えるかな・・・。
長嶺さんと大樹は先生に事情を説明してとりあえず見学を再開して少し自由時間をとることになった。その間に見つけて戻ってきて欲しいと思いながら休憩する2人。
「麻那辺さんどこに行ったんだろ?」
探してながら歩いていると、遠目にうちの学校の制服姿の女子生徒を見かけた。あれだ!と思い見失わないように進む。
結構近くに来てようやくそれが麻那辺さんだと確認できた。
「麻那辺さん」
「あ!相澤君!」
「ようやく見つけた、早くみんなところに戻るよ」
「ごめんね、迷惑かけちゃって」
「気にしないでください、いつもの事ですから」
「いつもって…酷いよ」
「すいません、もう慣れちゃったんですよ、だから気にしなくても平気です」
麻那辺さんに長嶺さん、常に振り回されてるのでもう慣れたし、今では楽しいとすら感じているから、元気な麻那辺さんじゃないとね。
「さぁ、戻りますよ」
「うん!」
こうして迷子の麻那辺さんを回収してみんなの所に戻った。先生には迷惑をかけたのでしっかり謝り、時間が少し過ぎたがお昼を食べ、清水寺に向かう。
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