36話「夫婦なんてまだ早いんだから!!」

「よーしお前ら、大体出来たか?まだの奴らは後でもってこい。時間も終わるから次のLHRまでにペア行動については話し合っとけよ」


 そして2度目の修学旅行計画の時間が終わった。

 麻那辺さんとは隣同士なのでペア行動については話し合いやすい。


「相澤君はどこか行きたいところある?」


「僕は特にないかな?実はこれで2度目だから麻那辺さんの回りたいところを優先的に回ろうよ」


「そうなんだ!じゃあどこにしよっか、ペア行動だし結構自由だから迷っちゃうなー」


「麻那辺さんは登山に興味出てきてたんだよね?」


「え?うん、そうだけど、いきなりどうしたの?」


「じゃあ登山しない?」


「なるほど、嵐山だね」


「そうだよ、まぁ登山ってほど登山じゃないと思うけど、色々景色も綺麗だし、いいんじゃないかな?」


「うん、いいよ!」


 麻那辺さんとは登山と後は適当にブラブラすればいいかってことになり、決まった。


「じゃあ今度の土曜日実践かねてどこか登ってみる?」


「いいね、その後必要なものでも買いに行こうか」


 なんかこの会話傍から聞いてたら同棲してるカップル見たいじゃん。まぁ、幸いこれを聞いてる人もいないみたいだし大丈夫でしょ。


「なんか夫婦みたいやな、その会話」


「なっ!」


「!?」


 またもや長嶺さんに聞かれていたらしい。この人タイミングよすぎでしょ。


「長嶺さん、いきなりど、どどうしたんですか?」


 僕もつっかえまくりだ。


「そうよ、私と相澤君がふふ夫婦だなんて・・・ま、まだ早いわよ!」


 麻那辺さんの一言はそれはとてもとても大きなもので、今話しているのは休み時間のクラスの中、それなりに騒がしい中でも麻那辺さんのその言葉はみんなの耳にしっかりと届き・・・


「「「えぇ――――っ!!!!!」」」


「い、いまのは違うの!!!」



 麻那辺さんも自分の言ってしまったことに気づいたのか、どんどん顔が真っ赤に染っていく。そして一生懸命否定しまくってる。


「相澤のやろー、やっぱり麻那辺さんと楽しいことを!」


「「呪ってやる」」


「「許すまじ」」



「だから違うって!!」


 麻那辺さんも必死に収めようとしてるけど上手くいってない。僕もどんどん囲まれてきてる。どうしてこんな目に、そう思いながら僕はベランダに飛び出て逃げる。

 こうして僕は久しぶりの鬼ごっこをまたやるハメになった。



 その頃私は相澤君が飛び出してったベランダを見ながら、質問攻めにあっている。


「麻那辺さん、相澤と付き合ったの?」


「同棲までしちゃってる感じ?」


「まだ早いって、そこまで考えちゃってるの?」


 こんな感じで質問されまくり。


「だから違うって、長嶺さんも何か言ってよ~」


 こうなった全ての元凶である長嶺さんに助けを求める。


「あはは、まさか麻那辺さんもそこまで慌てるとは思わなかったわ、すまんな」


「この状況どうにかしてよ~」


「まぁ、これなら本当のことを言った方が早いんとちゃうか?」


「たしかに、そうかもしれないけど・・・」


「ウチも言ったるから」


 私は覚悟を決めて、みんなに私の気持ちを教えよう。そしてそのまま何もせずにいて欲しいという思いを込めて。


「みんな聞いて、さっき私が言っちゃったのはホントのこと。私は相澤君が好きだからそれで長嶺さんに茶化されて大きな声で言っちゃっただけ」


「せやで、だから相澤に詰め寄るんは辞めといてくれ、それにな相澤のことはウチも好きやから、そして告白もしとるからそのことに関しては余計な口を挟まんで欲しいねん」


 長嶺さんが言ってくれたことによりみんなは驚きの顔をしていたが一応納得はしてくれたみたい。

 まぁみんな彼氏彼女がいる人もいるんだからそこら辺は理解してくれてるんだろうな。


「そうだったんだ、頑張ってね」


「今度からは茶々入れないようにするぜ」


「そうだな、みんなも相澤を追い詰めないようにしとこうぜ」


 こうして、私と長嶺さんの恋は密かにクラスのみんなに応援されるという結果で私の起こした騒ぎは収まった。



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