断章 ヴァルハラ省 多世界転生局 転生阻止課

ブリュンヒルデ・レポート

転生阻止者フィルギア 海良寺清実について


 ノルニルからの報告によって多世界間転生候補者として補足されていた海良寺清実は、転生阻止クエストの対象となるも、担当転生阻止者フィルギアとヴァルキリーはこれに失敗。

 海良寺清実自身は、転生局長フレイアの説得により転生阻止者フィルギアとして帰着転生を果たした。


(なお、このクエスト失敗には、召喚者サマナーと呼ばれる妨害組織の干渉が疑われている。別途スヴァーヴァ隊第六班による調査が継続中)


 海良寺清実は、転生局長フレイアの判断により、雷神ティールのルーンを刻印した憑依義体ウイルドを装備し、転生阻止者フィルギアとしてのクエストに従事。


■海良寺清実の作戦遂行能力について

 極めて高い。

 憑依義体ウイルドとの親和性が非常に高く、特に霊素エーテル制御能力については他に例を見ない高度なレベル。先天的な要素と思われるが、因子については不明。

 窮地での新規制御式の構築、超圧縮臨界発動の早期習得など、状況への対応力も高い。

 ただし、周囲の人的損害を嫌う指向が非常に強く、時に合理的でない判断を下すことがある。現状、クエストクリアに支障は出ていないが、今後も注意が必要。


■海良寺清実のクリア実績について


 一:アンドウ・カレン

 トラックによる交通事故死を阻止。

 これが初のクエストクリアとなった。


 二:イガワ・ミノリ

 自殺を阻止するために動いたが、結果召喚者サマナーと呼ばれる暗殺者による殺害を阻止。

 雷撃サンダーボルトの制御ミスにより、周辺被害あり。天災として処理。


 三:ウノハラ・エリカ

 ストーカーによる殺人を阻止。

 容疑者が複数名おり、特定に時間を要した。また、候補者の肉親に警察関係者がいたため、今後のクエストに支障とならないよう対処が必要。


 四:エザワ・シンゴ

 自殺を阻止。

 警察組織と暴力団、双方からの追跡を排除し、自殺を偽装。国外への逃亡によって身柄を保護。クエスト中に一般人を巻き込む形となったが、最終的には候補者の支援となった。


 五:オミネ・チカコ

 いじめによる殺人を阻止。

 学校という閉鎖社会でのクエストのため、付帯要素が多く時間を要した。また、潜伏していた魔法使いと遭遇。施設に損害を与えた。これは爆発事故として処理。



召喚者サマナーと呼ばれる妨害者について


 クエスト「イガワ・ミノリ」にて初遭遇。

 基底世界法則者「ユミル」に使役された暗殺部隊。「他世界間伝播」を目的としているものと思われる。

 海良寺清実が遭遇した識別名称「キリコ」は、練度の高い体術を持つ。霊素エーテル制御能力は皆無のため、対応は比較的容易。ただし、「ユミル」による他世界技術の支援を受けているため、注意が必要。


 なお、本項については法則者による意図的な妨害とみなし、警戒レベルを最大に設定。スヴァーヴァ隊による継続調査を申請するものとする。


■付帯事項:地上における魔法使いの残存について


 クエスト「オミネ・チカコ」にて初遭遇。

 前項にあげた基底世界法則者「ユミル」との対立を標榜し、基底世界において秘密裏に霊素エーテル制御技術を保持していた。ルーン顕性範囲は全身に及んでおり、練度は極めて高い。無詠唱無呼吸無動作によるカテゴリーAランク構築式の行使を確認している。「ユミル」との敵対という点に於いて、我々との対立要素は少ないものと思われるが、不明要素が多く引き続き要警戒。


■懸念事項:海良寺清実のルーン顕性範囲の拡大について


 憑依義体ウイルドとの高度親和性の副反応として、今後のクエストにおいて顕性範囲の過拡大が懸念される。顕性範囲が体表にまで及んだ場合、雷神ティールとの共振が発生する可能性が大。憑依義体ウイルドの制御系統の混乱、ないし共存憑依、人格融合の危険あり。副反応が確認された場合、ただちにヘルヴォル・アルヴィト隊による処置を申請するものとする。


 以上



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これまで「転生者が多すぎて異世界に転生できなかった俺は、他人の転生を阻止することにした」をお読みいただき、ありがとうございました。


本作品はここで、更新休止としたいと思います。

理由は大きく二つです。


■10万字を超えても期待より評価が伸びない

■他の作品も書いてみたい


このお話のネタ自体は他にも用意があったので、非常に悔しいです。

ただ、いくつもの作品を並行して書けるほど速筆でもないため、ここで休止としようと思いました。


ここまでお付き合いいただいた皆様、ご期待をかけてくださった皆様、本当にありがとうございます。

もしよろしければ、現在更新中の以下の作品もご覧いただけると幸いです。


猟師の息子ですが、魔法学園では”災厄”と呼ばれています

https://kakuyomu.jp/works/1177354054886019741



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