第11話 真田流講座 その1




先読みの練習・・・




母親は道場へ通うことをあっさりと許可してくれた。

これでご近所で迷惑になっている奇行をやめてくれるとでも思ったのだろうか。




「私の予想通りね。あなたは私の弟子になってくれると思っていたわ」

「予想ですか・・・」



「あなたは武術に飢えているそう感じた」




「壁を壊す=武術じゃありません。そうなんというか、やっぱり『はたく』は真理の探究その一言に・・・」


「では、修行を始めます」

(聞いてやしない・・)




ユズハは何かの小道具を孝一の前に準備した。これはオセロだった。



「なんですか?これは」

「オセロよ」

「知っています」

「お気に召さなければ、チェスでも将棋でもトランプでもいいわ」




「武術を教えてくれるんじゃないんですか」

「これは・・・武術の一環、大事な修行の一部よ」

「・・・」



二人はオセロを始めた。

中盤にさしかかった頃、ユズハは紙とペンを取り出した。



「さて、ここからが本番よ」

ユズハは何かを書いて紙を伏せた。



「?」



「次にあなたが打つ位置を予想した。さあ、どこでも好きな位置に打ってみて」

「・・・」


孝一は駒を置いた。ユズハが紙をめくるとその位置が書かれていた。

「・・・」


「どうしてわかったのかって顔をしているわね。3つの駒を裏返せる場所と2つの駒を裏返すことができる場所そのどちらかに打つと予想した。わたしが何も言わなければあなたは3つの場所を選択したでしょう。でも、わたしがちゃちゃを入れた。わたしの思い通りにしたくなく、なおかつ勝負を捨てる気もないあなたは2つの駒の場所を選択する」

「・・・ち」

予想通りだった。



「次はあなたの番よ。わたしの打つ手を予想してみて。」



「・・・」

「・・・」



「よし、当たり」

「さて、理由を言ってみて」


「このカドを押さえるとここを起点にたくさんの駒を裏返すことができるからだ」

「わたしがあなたの予想をわざと外そうとしてデタラメに打つと考えなかったの?」


「この勝負で何かを伝えようとしている本人がいい加減なことをしたら、このオセロの意味がなくなってしまう。それに、あんたは小さな勝負もこだわって勝とうとするタイプだ」

「・・・・ふふふ。察しが良くて助かるわ」




オセロの結果は孝一の惨敗であった。



「オセロとか人生で数回しかやったことないし」

ユズハは紙を裏返した。

『このあと、「オセロは久々にやって調子が出ない」と負け惜しみを言う』



「・・・」





「あんたが次に言うセリフは武術は『予想することが大事なのじゃよ』とかそんなんだろ・・・」

「ええ、その通り」


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