詩で世界をやさしくできるかはわからないけれど、君と居酒屋に入ることはできる。

藤猫くする

とりあえずビール

まあ、正直言ってそんなに好きじゃないよね、ビール。

だって冷静に考えてさ、かなり癖の強い飲み物だと思わない?

ひたすら苦いし、炭酸だし。何でこんなに万人受けするかのように語られるのか、よくわからないんだよ。

普段なら、まず選択肢には入らない。

なんだけど、つい口から出ちゃうんだなぁ。

「とりあえず、ビール」って。

思うにさ、ビールって信頼はおけるでしょ。大概どこの店にでもあるし、すぐに出してもらえる。その安定感に。

そして、ビールさえ出てくれば、乾杯して飲み始めることができる。そう考えると、なかなか偉大な存在だよ。

つまり、これは宣言なんだよね。あなたと早く酒を酌み交わしたいですよ、っていう、意思表示のための様式。

本当は、そう口で言ったっていいんだけど。それは少し気恥しいからさ。偉大な様式の勢いを借りてしまうわけだ。

だから、まあ。

座りなよ、ビールで乾杯しよう。とりあえず。

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