第三章 春季下越地区大会 四 試合当日

 正昭の運転する車が体育館に到着したのは、第三試合の第四クォーターが始まった頃であった。


 駐車場に車を停めると、二人は体育館の正面玄関に向かって歩き出した。


「あら、鯉のぼり」


「……端午の節句か」


 体育館脇には国旗を掲げるポールがある。今日はそこで大きな鯉のぼりがゆったりと泳いでいる。


「随分立派な体育館だな」


「最近出来たばかりじゃないかしら……洋さんが来なかったら、おそらくこんな立派な体育館に足を向けるなんて、一生無かったでしょうね」


「そうだな」


 そんな会話をしながら、二人は体育館内に入ると、対戦カードが書かれてある大きな紙にすぐ気がついた。


「どうやら、山並はAコートのようだな」


 正昭はそう言うと、隣にある館内図を見て、


「こっちだな」


 と言って歩き出した。


 階段を上って行くと、目の前に扉が見えた。


 館内では各チームの応援が入り交じり、熱気が渦巻いている。


 扉が開くと、正昭の顔が見えた。


「これは凄いな」


 正昭の後ろから、信子も姿を見せた。信子は、立派な体育館と熱気に威圧されたからであろう、驚きのあまり言葉を失ったようであった。

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