第三章 春季下越地区大会 四 試合当日

 早田と滝瀬はそれを見てちょっと笑った。


 メンバーは由美に貴重品を渡すと、大会期間中更衣室として用意されている多目的ルームへと向かった。


「ユニフォーム、もう着ておくか」


 と、早田が日下部に尋ねると、


「いや、先生の指示を待とう。どっちになるかまだ分からないからな」


 と返事をした。


 二・三年生は統一ジャージを着て来ているので、先に会場へと向かった。一年生は学生服を着ての会場入りなので、自前のジャージに着替えた。学生服を着て来るように指示したのは藤本である。理由は、山並高校の者であることを第三者に分からせるためである。


 着替えを終えた一年生が多目的ルームから出て来た。先輩のいる場所を見つけて、改めて目映いばかりのコートを見ると、


「うわっ、すっげえ。バスケットの試合って、いつもこんな所でするんだ」


 と、鷹取が一人興奮気味に言った。


 新しい体育館のコートは二面、二階の最上部にはランニングコースが設けられており、その下に、今山並のメンバーが座っている観覧席がある。


「おい、見ろよ、天井。何かオブジェみたいになってるぜ」


 鷹取が目に言うと、目も天井を見て、


「プレーがしやすければ、それでいい」


 と素っ気なく答えた。


「何だよ、もっと熱く語れよ。これじゃあ、俺がバカみたいだろ」


「バカみたいじゃなくて、バカなの」


「ええっ。羽田、それはないだろ」


「鷹取、喋ったばかりいないで、早く座れ」


 加賀美が鷹取をジロッと見た。


 鷹取は、何で俺だけがと思いつつも、逆らうと後が怖いので、大人しく席に着いた。


 由美はそれを見てクスクスッと笑った。

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