第二章 新しいユニフォーム 十一 記念写真 

 日下部達と別れた後、早々に家に着いた洋は、いつもと同じようにリュックだけを居間に置いた。


 居間には、信子だけでなく正昭もいた。今日の土曜はどうやら休みだったようだ。


 最後のトレーニングである鉄アレイ腹筋を終えると、洋は自室を出て階段を降りた。ああ、腹減った。今日の晩ご飯は何だろう?そう思いながら、襖を開けると、正昭と信子がこたつの向こう側で何やら繁々と見ていた。


「どうしたんですか」


「おおっ、洋」


「はい」


「このユニフォーム、どうしたんだ?」


 と言うと、正昭がそれを持ち上げた。


「あっ、それは今日支給されたばかりのユニフォームです」


「すごいな。一年から背番号入りのユニフォームがもらえるのか」


「僕だけじゃなくて、全員もらってますから、凄いことではないです」


「そうは言ってもな……ちょっと着てみてくれないか」


「ああっ、はい」


 と言うと、洋は部屋着を脱いだ。


 すると、正昭がちょっと訝(いぶか)しい顔をした。


「洋、それ、どうした?」


「それって?」


「左肩のあざ」


 見ると、左肩に結構な青あざがあった。


「……ああっ、あの時かな」


「あの時って」


「ルーズボールを取った時、背中から落ちたんですよ」


 正昭はそれを聞くと、すっくと立ち上がって、洋の腕を持ち、ゆっくりと回し始め

た。


「どうだ、痛いか?」


「いや、別に」


「大丈夫だとは思うが、念のため病院に行こう」


「えっ、病院?大したことないですよ」


「駄目だ。自己診断は禁物だ。もうすぐ公式戦だろ。打撲程度ならいいが、万が一骨にヒビでも入っていたら大変だ。良い整形外科を知ってるから、来週おじさんと一緒に行こう」


「えっ、授業は?」


「学校には、おばさんから連絡を入れておくわ。それより……」


 信子は正昭を見た。


「あっ、そうだったな。ユニフォーム姿、見せてくれよ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る