第二章 新しいユニフォーム 十一 記念写真 

 日下部は自転車に乗ったまま、


「地区大会まで後一週間。気合い入れていくぞ」


 と言うと、洋と山添は、


「はい」


 と言って、もう一度頭を下げた。


「矢島」


「はい」


「……いや、何でもない。じゃあ、気をつけて帰れよ」


 と言うと、日下部は自転車を走らせた。


「じゃあな」


 と言うと、山添も日下部の後に続いた。


 薄暗い道に自転車のライトが突き進む。頬を撫でる風が冷たい。


 日下部は先に走るライト見ながら、


《実質、俺は今日で引退だな》


 と、複雑な思いを抱きつつ、自転車を漕いでいた。


 ただ……


 日下部のその思いは、何も日下部に限ったことではなかった。


 ちょうど同じ頃。


《俺がレギュラーでいられるのは、今日限りだな》


 そんな思いを抱いて自転車を漕いでいる者が、実はもう一人いた。

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