第二章 新しいユニフォーム 九 切り札

 しかし、時間は過ぎゆくも、点差は今尚9点のまま。


 スコアボードの時間が4分になったところで、笛吹はタイムアウトを要求。


 菅谷が滝瀬に対してファウルしたところで、ホイッスルが鳴った。


「青11番、プッシング。タイムアウト、青チーム」


 藤本が大声でコールした。しかし、最高潮に達した応援合戦の熱が、それを掻き消してしまう。


 さすがにここまで来ると、青チーム全員しんどい表情を見せていた。


 笛吹が二言三言何かを言った。それは間違いなく、最後の勝負に出ることへの再確認だった。


 コートに戻る前、全員で円陣を組んだ。


 笛吹が、


「絶対に勝つぞ」


 と気合いを入れると、全員が、


「オー」


 と声を上げた。


 それを見た一・二年女子は、


「山並、パパン、山並、パパン」


 と、ありったけの力を振り絞って声援を送り、それに負けじと三年女子もまた声援を送った。


 両チーム、コートに戻って来た。


 白チームもまたしんどい表情を見せている。彼等に策はあるのか?いや、仮に策があったとしても、ここまで来たら、勝敗の行方を握っているのは、精神力のみである。


 青チームの秘策が逆転に導くのか。


 白チームの底力が突き放すのか。


 泣いても笑っても、残り時間は3分強。


 藤本が奥原にボールを渡した。

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