第二章 新しいユニフォーム 四 新しいユニフォーム

 洋は何も言わず、講堂に座ったまま先輩達の楽しそうな顔をただじっと見ていた。


「おい、矢島」


 洋は何を考えることなく顔を向けた。鷹取がこちらを見ていた。


「お前のユニフォームもあるぜ。早く来いよ」


「えっ?」


「早く来いよ」


 洋は講堂から降りて、ゆっくり歩いて行った。


「ほら、シューズを買いに行った時、服のサイズがどうのこうのって話になっただろ。あれ、ユニフォームのサイズを知るためだったんだよ」


「ああ、そう言えば」


「とにかく、順番からすれば俺達が最後だから、背番号もきっと最後のはずだぜ」


 と言いながら、箱からユニフォームが無くなるのを見ていた。


 洋と鷹取以外は全員、ユニフォームを手にした。箱の中には確かに二着残っていた。サイズからして、鷹取は15番、洋は17番だった。


 しかし、何かちょっとおかしい。背番号はキャプテン番号である4番からメンバー全員のを作った。メンバーは全部で13人だから、最後は16番になる。だから、洋の背番号は16番になるはずだ。しかし実際は、16番は欠番であり、洋の背番号は17番となった。


 藤本の話では、ユニフォームを作る話を鈴木にしたときにはもう一人いたが、結局退部してしまった。それが何かの手違いで16番が17番に替わってしまったのではないか、とのことだった。

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